「世論(よろん)」と「世論(せろん)」の意味の違い その読み方

ある報道番組に二人のコメンテーターが出演していました。

ある場面でA氏は「世論(よろん)」と言い、B氏は「世論(せろん)」と言いました。

放送関係では「よろん」と読むのが一般的ですが、B氏はあえて「せろん」と言っていたようです。

B氏はどういう意図で「せろん」と発したのでしょうか?

ということで、今回は

「世論(よろん)」と「世論(せろん)」の意味の違いとその読み方

について調べてみることにしました。

 

 

 

 

 

「世論(よろん)」と「世論(せろん)」の意味

明鏡国語辞典で「よろん」と「せろん」を引いてみました。

よろん【▾輿論(世論)】

世間一般の人々の考えや意見。

「―に訴える」「―調査」

▷public opinionの訳語。

「輿」はもろもろ、みんなの意。

表記

「世論」は「輿論」の言い換え語として採用された「世論(せろん)」が「世論(よろん)」と誤読され、一般化したもの。

「世論」の場合は、「よろん」を避けて、「せろん」と読む人も多い。

 

せろん【世論】

ある問題に対する世間一般の意見。せいろん。

「-の動向を調査する」

▷「輿論」の言い換え語として用いられたことから、「よろん」とも読まれる。

【出典元:明鏡国語辞典 大修館書店】

「世論(せろん)」と「世論(よろん)」という二つの読み方が生まれた訳

元々この「世論(せろん)」と「世論(よろん)」は別々の言葉だったのです。

かつて、「よろん」は「輿論」と書き、「せろん」は「世論」と書いていました。

ところが、昭和21年に当用漢字が定められたとき、「輿」という漢字が当用漢字表からはずされました。

そのため、新聞などでは「輿論」と書くのをやめて「世論」と書くようになったのです。

このとき、「世論」を「よろん」と読むか「せろん」と読むかは、読者の自由に委ねられました。

そうした経緯があって、「世論(せろん)」と「世論(よろん)」という二つの読み方が生まれたという訳です。

また、当時の放送はラジオだけでしたが、ラジオでは言葉として一般化していた「よろん」を使っていました。

ラジオは音で伝えるメディアなので、文字にとらわれることがなかったのです。

その後、テレビの時代となり、「よろん」を漢字で表す必要が出てきましたが、「輿論」は使われないので「世論」と表記したのです。

そして、読みは、それまでどおり「よろん」としました。

以後、放送等では「世論」と書いて「よろん」と読むのが一般的になりました。

【参考:NHK放送のことばハンドブック 日本放送協会 編】

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「世論(よろん)」と「世論(せろん)」の意味の違い

 さて、「世論(よろん)」と「世論(せろん)」の意味の違いですが、デジタル大辞泉(goo辞書)には、

よろん【輿論/世論】の解説

世間一般の人の考え。ある社会的問題について、多数の人々の議論による意見。せろん。「―を喚起する」「-に訴える」→せろん(世論)

[補説]当用漢字制定以前は「よろん」は「世論」と書いた。「世論」は「せろん・せいろん」と読んだ。「輿論」は人々の議論または議論に基づいた意見「世論(せろん)」は世間一般の感情または国民の感情から出た意見という意味合いの違いがある。

【出典元:デジタル大辞泉(goo辞書)】

また、Wikipediaの解説には、

世論(せいろん、せろん、よろん、英語: public opinion)は、世間一般の意見のことで、公共の問題について、多くの人々が共有している意見、もしくは大多数の賛同が得られている意見(考え)のことを指す。一つの問題を巡って世論が割れ、対立し合うこともある。

【出典元:Wikipedia】

とあります。

明治時代に「輿論」はpublic opinion、「世論」はpopular sentimentと訳されました。

publicは「国民一般の、国民全体の、大衆の、公共の」、opinionは「意見、見解」。

現代ではpublic opinionは「民意」とも訳されています。

popularは「民衆の、人民の」、sentimentは「感情、情緒」。

popular sentimentは「庶民感覚、国民感情」などと訳されています。

このように、本来の「輿論」と「世論」の意味は明らかに違っていました。

冒頭のB氏は「国民感情」という意味で「世論(せろん)」を使ったのではないかと考えられます。

報道番組などでは「よろん」を使うのが一般的ですが、内容に応じて「よろん」と「せろん」を使い分けるべきだという考え方もあるようなので、今後も注視していきたいものです。

「世論」は(よろん)か(せろん)か?

ところで、現在では「よろん」が多数派となっていますが、「世論」の読み方については、文部科学省用字用語例に、

見出し表外漢字・表外音訓等書き表し方備考
よろん輿論世論(「世論」は「せろん」とも読む。)

【出典元:文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)】

とあり、「世論」は「せろん」と読んでもよいことになっています。

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まとめ

  • 「世論(よろん)」→人々の議論または議論に基づいた意見。民意。
  • 「世論(せろん)」→世間一般の感情または国民の感情から出た意見。国民感情。
  • 「世論」の読みは「よろん」でも「せろん」でもよいが、放送等では「よろん」と読むのが一般的。内容に応じて「よろん」と「せろん」を使い分けるべきだという考え方もある)

 

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