百年文庫37「駅」ヨーゼフ・フロート 戸板康二 プーシキン
「駅長ファルメライアー」ヨーゼフ・フロート 渡辺健 訳
オーストリアのとある駅の駅長ファルメイアーは、妻と双子の女の子と暮らす普通の人間でした。ところが、ある日起きた彼の管理下の鉄道事故の後、彼の人生は大きく変わっていくのでした。
彼は事故で助けたロシアのヴァレフスキー伯爵夫人のことが忘れられず、兵隊として赴いた戦地でロシア語を習得し夫人に会いに行きました。やがてロシアに革命が起こり、彼は夫人を連れてロシアを逃れます。二人はヴァレフスキー家の別荘で暮らし始め、夫人はファルメライアーの子供を身ごもります。しかし、そこにヴァレフスキー伯爵がボルシェビキから逃れて帰って来たのです。伯爵は寝起きや食事も一人でできない状態でした。
結末はどうなるのでしょうか? 最後の章はわずか一行で終わっています。
「グリーン車の子供」戸板康二 訳
1975年(昭和50年)の作品。
歌舞伎役者中村雅楽は、大阪から東京へ帰る新幹線で幼い女の子と隣り合わせました。女の子は父親らしき男性に付き添われていましたが、これから一人で東京に向かうということでした。雅楽に同行した竹野の席は通路を挟んで一つ後ろで、その隣には京都から乗った40歳ほどの和服の女性が座っています。切符を手配した支配人が雅楽と竹野を同席にしなかったは何故でしょうか? 女の子や和服の女性の言動から、その理由が少しずつ分かってきます。
舞伎役者の中村雅楽が謎解きに挑む作品はほかにも何作かあるようなので是非読んでみたいものです。
「駅長」プーシキン 神西清 訳
1820年の作品。
「駅長」といっても、この駅は鉄道ではなく、駅逓馬車(馬車の馬を乗り継ぐ)の駅のことで、旅人の休憩の場所でもありますた。
物語は、その駅長と娘の話。美しく気立てのよい娘は誰からも愛されていました。ところがある日、馬を求めて立ち寄った若い驃騎兵士官に娘が連れ去られてしまいます。駅長は娘を取り戻そうとしますが諦めざるを得ず、失意のまま年老いて亡くなってしまいます。
下級官吏である駅長の哀しみが迫る作品でした。
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