百年文庫41「女」芝木好子 西條八十 平林たい子
「洲崎パラダイス」芝木好子
舞台は洲崎遊郭へ渡る橋のたもとの小さな飲み屋。会社をクビになった男と娼婦上がりの女の物語です。女はこの店で、男は近くの蕎麦屋で働くことになりました。女はすぐに客に気に入られ明日からの変化を夢見ますが、男は嫉妬しつつも女を頼ります。女はそんな意気地のない男に愛想を尽かすのですが……。「寂しがりやで、小心で、そのくせ無謀なところもあった。屋台へ入るのも気恥ずかしくて、女をからかうすべもしらず、こそこそ隅にいってしまう男だが、メータクに乗ると、釣銭はいらないと見栄を張ったりする。」という言葉に女性ならではの視点を感じました。
「黒縮緬の女」西條八十
大学を出たばかりの主人公が浅草六区で出会った黒縮緬の女。主人公は雷門の大通りに面した天ぷら屋で女と酒宴をもち、本願寺うらの旅館に入りました。それから四日後、その女が今戸のお粂という大姐御だと知るのです。「おもいでは風のように来る」という書き出しが、遠い日の思い出を自然に甦らせています。
「行く雲」平林たい子
里子の夫には女がいて、その女との間に娘がいました。里子は夫と離婚し息子と二人で暮らしていました。ある日、女から夫が交通事故に遭ったという電話を受け病院に駆けつけますが、夫は帰らぬ人となっていたのでした。里子は、女と娘が夫のことを忘れても、自分はゆっくりと深く夫の死を悲しんでやろう、と思いました。別れた夫の死に対する悲しみが複雑に描かれている作品です。
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