百年文庫42「夢」ポルガー 三島由紀夫 ヘミングウェイ

「すみれの君」ポルガー 池内 紀 訳

「すみれの君」とはルドルフ伯爵の愛称です。

彼は湯水のように金を使い、女たちによくもて、連隊仲間にも人気がありました。しかし、トランプの借金により財政が悪化し一介の兵士になってしまったのです。そして時がたち貧困の老人となった彼の前にオペレッタの星ベッティーナが現れます。老いて落ちぶれてもなおプライドを持ち続ける貴族の話です。

「雨の中の噴水」三島由紀夫

少年は、人生で最初の別れ話をするという夢のために少女を愛し、それを実現しようとしました。

少年は、雨の中、涙を流す少女を傘に入れて歩きました。そして少女に噴水を見せるために公園へ行き噴水を眺めつづけました。

少年は少女が別れ話に涙していたとばかり思っていました。しかし少女は肝心の「別れよう」という言葉を聞いてはいなかったのです。少年の夢は実現しなかったのです。

噴水が、そこにあるかのように描かれています。

「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」ヘミングウェイ 高見 浩 訳

物語は食事用テントの中の場面から始まります。

主な登場人物は、フランシス・マカンバーとその妻マーガレット・マカンバー、そして狩猟ガイドのロバート・ウィルソン。三人は、このテントを拠点に狩猟をしていました。

マーガッレットは、ライオンのことが話題になると「ライオンの話は止めましょうよ」と言います。この言葉の意味が知りたくて読み進めていきました。

すると、「そもそものきっかけは……」とそのライオンの件について話がはじまりました。

手負いのライオンの描写が凄いのです。この場面を映画で表現できるでしょうか? 文章でなければ表し得ない場面ではないかと思います。(これは戸川幸夫の「爪王」と共通します)

このライオンの一件を知るとマーガレットの言葉の意味が分かってきます。そしてそれは、その後の三人の関係、思わぬラストシーンへの展開へとつながっていくのです。

写実的で、まるでスケールの大きな映画を見ているようでした。

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