「善助と万助」海音寺潮五郎
善助は後の黒田家一番家老の栗山備後。万助は三番家老の母里但馬友信。
善助は弁舌さわやかで心根は誠実。万助は剛情者で黒を白と言いとおした男。
このまったく性格の違う二人が若い頃に取り交わした誓紙がありました。
物語は二人が50歳を過ぎてからの事。何歳になっても人の性格というものは変わらないものです。剛情な但馬がある騒動を引き起こしました。そのとき備後はどう動いたのでしょうか……。
表題「絆」にぴったりの物語です。
「五十年後」コナン・ドイル 延原謙 訳
百年文庫というアンソロジーを読み進めていたら、こんなにも良い作品に出会うことができました。
「こんなにも」とは、例えば映像にするとしたら、宇宙から捉えた地球のシーンからスタートし、イングランドのデヴォンシャーという町がズームインされていくところです。
そこに結婚間近の若い二人が住んでいました。男性は新しい仕事が決まりカナダに渡り、後に婚約者とその祖母の三人で暮らすことになっていました。ところが彼はカナダで悪徳下宿のポン引きに襲われてしまうのです。彼は昏睡のすえに一命を取り留めましたが記憶を失ってしまうのです。そしてそれから五十年が経ち……、という物語です。
短編でありながら、スケールの大きい物語です。そして、デヴォンシャーという町に住む人々の描写には、なんとも味わい深いものがあります。
「山椿」山本周五郎
山本周五郎の作品は学生時代に文庫本で何冊か読んだことがありますが、この作品もその頃に読んだような気がします。
作者の「人へのいたわりと優しさ」がこの作品からも滲み出ています。主人公の梶井主馬がきわめて普通の人であるところも良いと思います。
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