「馬乃文章」林 芙美子
丹波草石という売れない作家の話。作家は家賃が払えず家主から追い出され、布団と娘を抱えて友達のアパートに転がり込みます。その日、妻がよいとまけで稼いだ金で馬肉を買ってきました。娘が食べたかった馬肉です。親子三人の二畳の暮らしにも、どこか希望を感じることができる作品です。
「ある結婚式」獅子文六
「結婚式なぞなしにしたい」と考える息子の母親から媒酌人を頼まれた私は、福沢諭吉が考案した誓約結婚の方法を思いつきます。さっぱりとした式を行ったつもりでいたが、若い二人の反応はどうだったのでしょう……? 読後感の好い作品です。
「軍国歌謡集」山川方夫
主人公の大学生は場末の飲み屋である男と知り合いました。男は映画のエキストラをしています。そして主人公はエキストラの下宿に転がり込みます。
その窓の下を歌を歌いながら通る女性がいました。物語はその姿の見えぬ歌声から展開していくのです。
若き日の夢と悲しみが交錯する物語です。
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