「進歩の前哨基地」コンラッド 田中昌太郎 訳
未開の地であったアフリカの、とある交易所に派遣された二人の白人の物語です。原始の自然と人間と接し象牙を集めるのが彼らの任務ですが、原住民と意志疎通を図ろうとすると雨のような矢が飛んできます。会社からは充分な食料の供給はありません。熱病に罹るかもしれない。そのような中で、やがて彼らの食糧が底をつきはじめます。ラストシーンに、「進歩」に対する強いメッセージが込められています。
「暗号手」大岡昇平
フィリピン戦線の部隊へ暗号手として配属された「私」の話。私は自分に万が一のことがあったときのために東大出の高級社員である中山を助手にしました。中山は暗号手の立場と高級社員であることを利用して出世していき、私と立場が逆転します。しかし……。
「聖ジュリアン伝」フロベール 太田浩一 訳
ジュリアンが生まれたとき、母は「ご子息はやがて聖者となられる!」と、父は「ご子息は!……おびただしい血が流れ、無上の栄誉に浴する!……」と予言を受けました。やがてジュリアンは、動物を殺すことを覚え、残虐な欲望を増大させていきます。ある日ジュリアンは驚くほど背の高い牡鹿の「残忍なる者よ、いつの日か、おまえはその手で父と母を殺めることになる」という声を聞き、やがて城を逃げ出します。
導入部のお城の描写が広大で美しい!
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