「ことば」について考えよう

百年文庫32「黒」ホーソーン 夢野久作 サド

「牧師の黒のベール」ホーソーン 坂下 昇 訳

フーパー牧師はあるときから急に黒いベールで顔を隠すようになりました。結婚式でも葬式でも、そして自分の臨終のときまでもベールを付けたままでした。牧師が黒いベールで顔を隠すようになったのは何故か? それが知りたくて文字を追い続けました。

その答えは、牧師の最期の言葉にありました。

「見よ! どの顔にも『黒いベール』があるではないか!」

黒いベールとは、表には見えない人間の深層のことを示しているのではないでしょうか? 人間が逃れることにできない真実を映し出しているように思えてなりません。

「けむりを吐かぬ煙突」夢野久作

「現代社会の堕落層に住む寄生虫である」と自認する新聞記者が伯爵未亡人宅に新しくできた不自然な煙突の正体を探っていきます。

推理小説・ミステリー小説の分野に入るのだと思いますが、この作品は怪奇的でした。表現が幻想的で純文学的な美しさもあります。

「ファクスランジュ」サド 澁澤龍彦 訳

ファクスランジュ家の一人娘ファクスランジュ嬢がこの物語の主人公です。ファクスランジュ嬢には離れ離れになるまいと固く約束したゴエ氏がいましたが、親の友人から紹介されたフランロ男爵と結婚しました。フランロ男爵は大した財産と宏壮な大邸宅もっていると伝えられていましたが、真実の彼は山中に根城をもつ匪賊(非正規武装集団)の頭だったのです。

サドは、30年近い幽閉生活の間に膨大な作品を書きました。日本にサドを紹介したのが訳者澁澤龍彦です。

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