「くすり指」ギッシング 小池 滋 訳
ローマで出会ったライトンとケリンの恋の物語です。
イギリス人のライトンはローマで療養中、ケリンはオーストラリアから郷里のアイルランドへ帰る途中でした。
最初、二人は互いに感情の表出を抑えていましたが、その距離は少しずつ縮まっていき、やがて惹かれ合うようになっていきました。そこに至る二人の行動、表情、心情の描写が絶妙でした。そして、最後まで落ち着いた文章が続いていきます。
この恋の行方については触れずにおきますが、「くすり指」が婚約指環をはめる指であることが物語の中に象徴的に描かれていることは申し添えておきたいと思います。
「お茶の葉」H・Sホワイトヘッド 荒俣 宏 訳
教師ミス・アビー・タッカーは節約生活をしてお金を貯めて念願のヨーロッパ旅行に出かけました。彼女は紅茶を飲みほした後にできる葉の模様から予言を読み取ることができました。旅先での予言はBOWという絵と4と7の数字でした。そしてその後に買ったネックレスが彼女に幸運をもたらします。
この夢のような物語は、昨今の暗い世相を一瞬忘れさせてくれるようです。
「ローマ熱」ウォートン 大津栄一郎 訳
主な登場人物はミセス・スレイドとミセス・アンズレーです。二人は娘時代からの友人で、共に娘を持ち未亡人となった中年のアメリカ女性です。二人は娘たちを連れて旅をしていました。二人はローマのレストランのテラスで食事をしていましたが、話しをしているうちに、それまで話したことのない娘時代の秘密が明らかになっていくのでした。それは一人の男性を巡っての衝撃的な告白でした。
二人の言葉のやり取りから微妙な心理状態が伝わってきます。
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