「ひとり者のナイトキャップ」アンデルセン 髙橋健二 訳
切れ、切れ、たきぎを!
おや、おや、こしょうの番頭さん!
ねるときゃ、ナイトキャップをかぶって、
あかりも自分でつけましょう!
これは、こしょう番頭とナイトキャップをからかう歌で、このナイトキャップを欲しがってはいけないのだそうです。何故欲しがってはいけないのか? この物語を読むとその理由が分かる、という仕掛けになっています。
主人公のアントンとモリ―は子供の頃から互いに好意を寄せていましたが、やがてアントンはふられてしまいます。失意のアントンを立ち直らせたのは、豊かな商人だった家の没落でした。不幸の中では失恋の悲しみなど考えていられなかったのです。
アントンはナイトキャップをかぶったこしょう番頭(ドイツの商人の番頭)になり、結婚はせずに独り生涯を終えました。
ナイトキャップを欲しがってはいけない理由は、是非本文で確かめていただきたいと思います。
「父親」ビョルンソン 山室 静 訳
主人公トオルは教区一番の有力者です。彼は一人息子のことで4度牧師の部屋を訪ねています。
初めは息子が洗礼をうけるため。次は息子の堅信礼で一番の席をもらうため。3度目は息子が教区一番の財産持ちの娘と結婚するため。そして4度目は……。
終末の「そうして二粒の涙が、のろのろと彼の顔を流れ落ちた」に、このアンソロジーの意図を感じました。
ビョルンソンは1903年にノーベル文学賞を受賞しています。
「ともしび」ラーゲルレーヴ イシガオサム 訳
主人公ラニエロは十字軍での武勇を賞され、キリストの墓の聖火を第一番にロウソクに点火したその火をフィレンツェに届けることになりました。
馬に乗ってロウソクの火を消さずにフィレンツェまで行くことは並大抵のことではありませんでした。
ラエニロは、その旅の中で「そうだ、おれはかよわい中にも最もかよわいものを守ることしか念頭にないのを、小鳥たちも知っているから、それでこのおれをこわがらないのだな」と自分の変容に気付き始めます。
ラーゲルレーヴは「ニルスのふしぎな旅」の作者で、1909年ノーベル文学賞を受賞しています。
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