「亡き妻フィービー」ドライサー 河野一郎 訳
ヘンリーとフィービーが結婚してから48年がたっていました。二人は睦まじい夫婦でしたが、ヘンリーが70歳のときフィービーが病死してしまいます。フィービーは64歳でした。ヘンリーはその後5か月を悲しみにふさがれた独り暮らしをしていましたが、あるときからフィービーの幻影を見るようになります。彼はフィービーが死んでいないと思い込んでいました。ヘンリーはフィービーを探し必死に彷徨うようになりました。その遍歴は7年に及び、ヘンリーはフィービーの幻を追って崖を跳び下りるという痛ましい最期をとげました。しかし、ヘンリーが亡き妻にめぐり逢い喜びにあふれたまま亡くなったのであれば、それは幸福なことだったのかもしれません。
「青靴下のジャン=フランソア」ノディエ 篠田知和基 訳
ジャン=フランソワ・トゥーヴェは小僧たちから「青靴下のジャン=フランソワ」と馬鹿にされていましたが、皆、彼は立派な家柄の息子で、悪口を言ったことも悪いとをしたこともなく、勉強し過ぎて病気になってしまったのだ、と思っていました。もう少し詳しく言うと、彼はサント=A夫人に才能を認められて家庭教師になったのですが、その夫人の娘に恋をしてしまったのです。彼は自分がその娘にふさわしい身分になれないと知り、その思いを忘れるためにオカルト学や心霊論に没頭しました。そうしているうちに彼は病気になり幻視者となったのでした。
彼のことを語る「私」は、父から「おまえが大きくなってから、万一、この話を人にするとしても、本当の話としてするのじゃない」と教えられます。
「真理は無用なり」。深い言葉です。
「紅い花」ガルシン 神西 清 訳
本癲狂院(精神科病院)に送り込まれた患者の話です。彼は、地上の悪を絶滅するという一大事業のためにこの病院にいるのだと思っていました。彼は一睡もせず次第に痩せていきました。あるとき彼は庭の花壇に紅い罌粟(ケシ)の花を見つけました。彼はこの花には世界のありとあらゆる悪が集まっていると考え花をむしり取りました。その後、彼の容態が悪化しました。モルヒネも利かなくなり体を拘束されるようになりましたが、彼は病室を抜け出してなおも紅い花をむしり取ろうとするのでした。
作者は南フランス(現在のウクライナ)の出身です。
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