「ことば」について考えよう

百年文庫73「子」壺井 栄 二葉亭四迷 葉山嘉樹

「大根の葉」壺井 栄

1938年に発表された作者初期の作品です。

主人公、健は五歳。妹の克子は二歳で白内障の手術のため母に連れられ神戸の病院に行っています。その間、健は隣村のおばあさんの家に預けられていました。おばあさんの家とはいえ、その家の子供たちとの関係で悔しい思いをする健。丸い胴体に並はずれの大きな頭をした健の風貌。貧しさの中何とかして克子の目を見えるようしたいという母の心情に涙腺がゆるみます。

「出産」二葉亭四迷

1907年、作者43歳のときに東京朝日新聞に掲載された作品です。

妻の出産のため、夜中に産婆を迎えに行くことになったところから、無事男の子が生まれるところまでの様子や主人公の心情が事細かに綴られています。彼は生まれてきた赤ん坊を見て、「…… この苦の世の中へ苦を嘗めさせに頼まれもせぬに産ませた我が子を思うと、何とやら誰やらに済まぬような気もする…… 」と思いました。これは現代にも通ずる偽りのない親の心情なのではないかと思います。

「子を護る」葉山嘉樹

「近衛第二次内閣にあって新体制へ邁進している……」とありますから、1920年(昭和15年)頃のことでしょう。作家である主人公が家族を連れ都会から農村に引っ越してきました。村人からなかなか認められない彼は、自らに労働という苦行を命じました。そのような中で四つになる次女が肺炎になりました。彼は次女を背負い診てくれる医者を探して歩きます。そして次女を看病しながら変革期にあって何事もなし得ない自身を嫌悪します。満州移民の話題などその時代に生きた人の考え方や感じ方が描かれており興味深い作品でした。

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