「的確」と「適確」の意味の違いと正しい使い分け
さて問題です。
「台風接近による列車の運休は、(てきかく)な判断だった」
この例文の(てきかく)に入る漢字を選択肢から選んでください。
選択肢A「的確」
選択肢B「適確」
正解は……? どちらなのか迷ってしまいます。
目次
「的確」と「適確」の意味
そこで、はじめに国語辞典で調べてみることにしました。
「岩波国語辞典第五版」を引いてみました。
てきかく【的確】
的(まと)をはずれず確かなこと。
真相を突いていて正確なこと。
「的確な判断」
▽「適確」は当て字(出典元:岩波国語辞典第五版)
さらに、「広辞苑第五版」を引くと、
てきかく【的確】
(「適確」とも書く)
的(まと)をはずれず、たしかなこと。
てっかく。
「的確な情勢判断」
「的確に指示する」(出典元:広辞苑第五版)
「日本語大辞典」では、
てきかく【的確・適確】
的(まと)をはずさないで確かなこと・さま。
よく当てはまって、まちがいないこと・さま。
てっかく。
適切。
―な判断。
―な措置。(出典元:日本語大辞典)
なんと、辞典には少なくても、次の三つ記述がありました。
- 「適確」は当て字
- 「適確」とも書く
- 【的確・適確】
どちらを使ったらいいのか、迷ってしまいます。
どの辞書にも共通しているのは、「的確」と「適確」を別に記載していない、ということです。
同じ意味なのか、それとも違うのか、そこが肝心です。
「的確」と「適確」の違い
そこで、漢字を一文字ずつ調べてみました。
(出典元:広辞苑第五版)
「的」
「的」には、「まと」「めあて」「あきらか」などの意味があります。
「的」を使った熟語には、「射的」「目的」「的中」「的確」などがあります。
「適」
「適」には、「まっすぐ向かってゆくこと」「かなうこと」「あてはまること」などの意味があります。
「適」を使った熟語には、「適従」「適応」「適当」「最適」などがあります。
「確」
「確」には、「かたいこと」「しかっりして動かないこと」「たしかなこと」という意味があります。
「確」を使った熟語には、「確固」「確信」「確答」「正確」などがあります。
このことから、
「的確」の意味は「的(まと)をはずれず確かなこと」
となり、理解できるのですが、「適確」を同じように説明することはできません。
そこで、更に「適確」の意味を調べてみると、大修館書店のサイト内にある「漢字文化資料館」にくわしい記載がありました。
それによると、1977年刊行の文化庁「ことばに関する問答集」の中で取り上げられているということでした。
「適確」は「適性確実」「適切確実」を意味する法律用語
なのだそうです。
その根拠は、地方自治法の222条にあるとしています。
【参照条文】
○地方自治法(抄)
第222条 普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。
さらに、この問題は、1961年の国語審議会の総会でも話題になったそうで、同書は結論として次のように述べているということです。
法令用語としての「適確」を無視するわけではないが、一般用語としては「的確」だけでよい(中略)特に「適確」の意味で用いる必要があれば、むしろ「適正確実」「適切確実」と書く方がよいのではないか。
ということで、現在の国語辞典や漢和辞典では「適確」も認めた上で「的確」の方を優先しているようです。
「的確」と「適確」の使い方
「的確」の使い方
- 的確な判断
- 的確な想定
- 的確な指示
- 的確に伝える
- 的確に説明する
- 的確に把握した
「適確」の使い方
※主に法令文に使われます。
- 適確な実施
- 適確な措置
- 適確な救命
- 適確な維持管理
ということで、冒頭の問題にもどります。
「台風接近による列車の運休は、(てきかく)な判断だった」
この例文の(てきかく)に入る漢字を選択肢から選んでください。
選択肢A「的確」
選択肢B「適確」
正解は、選択肢A「的確」になります。
まとめ
「的確」と「適確」の違いをまとめると、
- 「的確」とは、「的(まと)をはずれず確かなこと」です。
- 「適確」とは、「適性確実」「適切確実」を意味する法律用語です。
- 日常的には「的確」が使われています。
ということになります。