「申し込み」「申込み」「申込」、送り仮名の正しい使い方
届けられる文書の中に「~の申し込みについて」という標題をよく見かけます。
そして、その漢字の送り仮名が「申し込み」であったり「申込み」であったり「申込」であったりすることが多くあります。
その語句を見れば、意味は分かるので、支障はないのですが、自分が文書を作る側に回ったとき、その送り仮名に迷うことがよくあります。
「申し込み」「申込み」「申込み」。
正しい送り仮名は、いったいどれなんでしょう?
目次
「申込み」「申込」は許容
そこで、手元にあった「日本語に強くなる本」(省光社)を手がかりに調べてみました。
本書の冒頭に、
「公用文」と「新聞・放送・学校教育」関係では取り扱いが異なる語で、「法令における漢字使用等について」(昭和56年・内閣法制局通知)では、「送り仮名の付け方」通則6の許容により、送り仮名を省くようにしている。その例の中に申し込み(申込み・申込)とあり、公用文については「申込み」と書くようになる。
(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)
とありました。
ここでは、「公用文」と「新聞・放送・学校教育」関係と区分していることを述べています。
ところで、「送り仮名の付け方」通則6の許容とは何のことでしょう?
調べてみると、文化庁のサイトの 「国語施策・日本語教育」>「国語施策情報」>「内閣告示・内閣訓令」にありました。
送り仮名の付け方 複合の語 通則6
許容読み間違えるおそれのない場合は、次の( )の中に示すように、送り仮名を省くことができる。
〔例〕
書き抜く(書抜く) 申し込む(申込む) 打ち合わせる(打ち合せる・打合せる) 向かい合わせる(向い合せる) 聞き苦しい(聞苦しい) 待ち遠しい(待遠しい) 乗り換え(乗換え・乗換) 引き換え(引換え・引換) 申し込み(申込み・申込) 移り変わり(移り変り)・・・・・・
(出典元:送り仮名の付け方 複合の語 通則6 許容)
このように「例」の中に「申し込む(申込む)」「申し込み(申込み・申込)があり、
それぞれ( )のように許容されていることが分かりました。
しかし、なぜ、「公用文については『申込み』と書くようになる。」が分かりません。 (^_^;)
「申し込む」「申し込み」が基本の送り仮名
ただし、公用文の場合も、許容を用いるのは「申込み」という名詞の形だけであって、動詞の方は、通則6本則によって「申し込む」を用います。
(出典元:「日本語に強くなる本」:省光社)
通則6本則には次のようにありました。
送り仮名の付け方 複合の語 通則6
本則複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。
〔例〕 (1) 活用のある語
書き抜く 流れ込む 申し込む 打ち合わせる 向かい合わせる 長引く 若返る・・・・・・
(2) 活用のない語
乗り換え 引き換え 歩み寄り 申し込み 移り変わり・・・・・・
(出典元:送り仮名の付け方 複合の語 通則6)
「複合の語」とは二つ以上の語根によって形成された語のことです。
二つの語のそれぞれの送り仮名が付く。
つまり、
- 「申す」+「込む」=「申し込む」
- 「申し」+「込み」=「申し込み」
となり、これが基本の送り仮名になります。
「活用のある語」とは、ここでは動詞、形容詞のことです。
「活用のない語」とは、ここでは名詞のことです。
「申込」は慣用に従ったもの
「放送・学校教育」関係では、通則6本則によって、「申し込み」とするわけであるが、慣用に従って送り仮名を付けない「申込書」「申込先」「申込者」「申込用紙」などは、教科書・新聞・放送・公用文での同じように扱いである。
(出典元:「日本語に強くなる本」:省光社)
この「慣用に従って送り仮名を付けない」とは
送り仮名の付け方 複合の語 通則7
複合の語のうち、次のような名詞は、慣用に従って、送り仮名を付けない。
〔例〕
(1) 特定の領域の語で、慣用が固定していると認められるもの。
ウ その他。
・・・・・・《代金》引換 振出《人》 待合《室》 見積《書》 申込《書》
(出典元:送り仮名の付け方 複合の語 通則7)
のことです。
「慣用」とは「使い慣れること」「一般・普通に使うこと」。
慣用化している名詞には送り仮名を付けないのです。
つまり、「申込書」「申込先」「申込者」「申込用紙」などは、教科書・新聞・放送・公用文でも同じように扱うということになります。
なぜ公用文では「申込み」と書くのか?
残る問題は、公用文については「申込み」と書く根拠です。
それは、内閣訓令第1号「公用文における漢字使用等について」(平成22年11⽉30⽇)に記載されてありました。
ただし、複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を適用する語を除く。)のうち、活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については、「送り仮名の付け方」の本文の通則6の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする。なお、これに該当する語は、次のとおりとする。
申合せ 申合せ事項 申入れ 申込み 申立て 申出
このことから、公文書では「申し込み」ではなく「申込み」を使うことになったのです。
まとめ
以上のことを整理すると、
公用文では
- 名詞の「もうしこみ」 → 「申込み」
- 動詞の「もうしこむ」 → 「申し込む」
- 慣用化した名詞の「もうしこみ」 → 「申込(申込書など)」
新聞・放送・学校教育関係では
- 名詞の「もうしこみ」 → 「申し込み」「申込み」
- 動詞の「もうしこむ」 → 「申し込む」「申込む」
- 慣用化した名詞の「もうしこみ」 → 「申込」
それでは「私文書」は? と問われれば……。
「新聞・放送・学校教育関係」に準ずるのがベストとお答えいたします。
自分の立場に応じた「ことば」の使い方、大切ですね!!
文化庁のサイト「国語施策・日本語教育」は、今後も活用できそうです。