「下さい」と「ください」の意味の違いと使い分け 公用文では
「下さい」と「ください」に意味の違いがあるということも知らずに、今までずっと「下さい」と「ください」を使い続けてきました。
これは解明の必要あり。
ということで、
今回は、
「下さい」と「ください」の意味の違いと使い分け
について調べてみることにしました。
目次
ください【下さい】の意味
はじめに、「日本語大辞典(講談社)」で「ください」を引いてみました。
ください【下さい】
一⦅五段の動詞「くださる」の命令形「くだされ」の変化したもの⦆「くれ」の尊敬語。
いただきたい。
ちょうだい。
give me
用例 これを―。
二(補動)⦅「お(ご)…ください」の形で⦆その動作をする人に丁寧に頼む。
…してほしい。
用例 ごらん―。おいで―。
(出典元:「日本語大辞典(講談社)」
「ください」には二つの意味があります。
- 一つ目は、「くれ」の尊敬語。「ちょうだい」「give me」の意味で「これをください」と使う。
- 二つ目は、「…してほしい」という意味で、その動作をする人に丁寧に頼むときに、「ごらんください」と使う。
このように、ここには、「ください」の二つの意味は書かれてありますが、「下さい」と「ください」の使い分けについては書かれてありませんでした。
「下さい」と「ください」の使い分け
そこで、「『日本語に強くなる本(省光社)』」の「『下さい』か『ください』か」を引くと、
「文部省用字用語例」では「ください」の書き表し方を二つ示している。
下さい―資料を下さい。
…(て)ください―問題点を話してください。
公用文では、現在のところ、このように、動詞の場合は「下さい」と書き、補助動詞として用いる場合には「……(て)ください」と書くというきまりになっている。
(出典元:「日本語に強くなる本(省光社)」
(※黄色マーカーは筆者)
「文部省用字用語例」に二つの書き表し方が示されているとのこと。
そこで、「文部科学省用字用語例」(平成23年3月)を引いてみました。
(2019.12.9加筆修正)
見出し 表外漢字・表外音訓等 書き表し方 備考 ください 下さい …(て)ください
資料を下さい 御指導ください、問題点を話してください
【出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)「文部科学省用字用語例」(平成23年3月)】
「…(て)ください―問題点を話してください。」については、「内閣訓令 公用文における漢字使用等について 平成22年11月30日」にも記載がありました。
漢字使用について
(2)「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たって は,次の事項に留意する。
キ 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則 として,仮名で書く。
例
・・・てください(問題点を話してください。)
(※黄色マーカーは筆者)
「日本語に強くなる本(省光社)」の「『下さい』か『ください』か」はさらに続きます。
つまり、「下さい」は、実質動詞で、「くれ」とか「与えてくれ」とかの意の尊敬・丁寧表現であり、「ください」は、動作を表す名詞や動詞の次につける補助動詞で、他の人に動作を依頼するときや、動作をする人に対する敬意を表す場合に用いる尊敬語・丁寧表現である。
(出典元:「日本語に強くなる本(省光社)」
ここまでをまとめます。
「下さい」
- 動詞
- 「いただきたい」「ちょうだい」「give me」という意味。
- 「くれ」の尊敬・丁寧表現
- 動詞の場合は「下さい」と書く。
- 「資料を下さい」「これを下さい」などと使う。
「ください」
- 補助動詞
- 「~~してほしい」という意味
- 動作をする人に対する尊敬・丁寧表現。
- その動作をする人に丁寧に頼むときに「~~(て)ください」と書く。
- 「~~」には動作を表す名詞や動詞が入る。
- 「問題点を話してください」「御指導ください」「ご覧ください」「おいでください」などと使う。
「下さい」と「ください」の例文
「下さい」か「ください」の使い分けを、例文をとおして見てみましょう。
「下さい」の例文
何かをもらいたい場合は「下さい」を使います。
「コ―ヒーを下さい」
「白菜を下さい」
「デザートを下さい」
「チケットを下さい」
「カタログを下さい」
「もう少し時間を下さい」
「アドバイスを下さい」
「ください」の例文
何かをしてほしいという場合は「ください」を使います。
「コーヒーをお飲みください」
「ぜひご参加ください」
「ご連絡ください」
「気をつけてお越しください」
「資料をご覧ください」
「お体にお気を付けください」
「約束してください」
「お申し付けください」
「ご安心ください」
まとめ
今回のテーマ「下さい」と「ください」の使い分けは、「公用文では」と対象を限定したきまりです。
公用文とは、「国や公共団体が法令や公用の文書などに用いる文章」ですから、そのほかの個々人の文章を対象にしたものではありません。
しかし、「下さい」と「ください」の意味の違いを知ることができたので、さっそくその使い分けを自分の文章に生かしてみようと思っているところです。
今回のポイントをまとめます。
「下さい」
- 動詞
- 「いただきたい」「ちょうだい」「give me」という意味。
- 「くれ」の尊敬・丁寧表現
- 何かをもらいたい場合は「下さい」を使う。
「ください」
- 補助動詞
- 「~~してほしい」という意味
- 「~~してほしい」と頼むときの、その人に対する尊敬・丁寧表現。
- 何かをしてほしいという場合は「ください」を使う。
国語辞典では “下さい” も “ください” も同じとされていますから。
漢字とひらがなで違うなどというのはおかしいと思います。
そんな話、昔は聞いたことありません。
このごろ、このようなことをしたり顔で言っている人を
ウェブで見かけると思ったら、犯人は公用文の書き方だったんですね。
コメントありがとうございます。
公用文の書き表し方の基準は、文化庁が世論調査をしたり審議会を開いたりして決めているようです。
文化庁のホームページには、審議会の様子なども記されてあります。
どのようにして基準が決まっていくのか興味のあるところです。