「体制」と「態勢」と「体勢」の意味の違いと使い分け

 

「当ホテルでは、東京オリンピック・パラリンピックのお客様を万全の(たいせい)でお迎えいたします」

 

この文のように、(たいせい)という言葉を使うとき、①②③のどの漢字を使えばよいか迷ったことはありませんか

①「体制」

②「態勢」

③「体勢」

この場合は、受け入れが、東京オリンピックの開催期間中に限られているので②の「態勢」となります。

今回は、②の「態勢」となる理由も含めて、

「体制」と「態勢」と「体勢」の意味の違いと使い分け

について詳しくお伝えします。

まずは、大辞林第三版でそれぞれの主な意味を引いてみましょう。

「体制」と「態勢」と「体勢」の意味

「体制」の意味

ある基本原理・方針によって秩序づけられている、国家・社会・組織のしくみ。 

「資本主義体制」

 「戦時体制」

 「救急医療体制」

(出典元:「大辞林第三版」三省堂)

「態勢」の意味

物事に対処する、前もっての身構えや態度。

事態に対応するための準備ができている状態。 

「万全の態勢で臨む」 

「態勢を整える」 

(出典元:「大辞林第三版」三省堂)

「体勢」の意味

体の構え。姿勢。 

「得意の体勢に持ち込む」 

「不利な体勢」

(出典元:「大辞林第三版」三省堂)

「体制」と「態勢」と「体勢」の違い

「体制」と「態勢」と「体勢」の違いを簡単にまとめてみました。

「体制」国家・社会・組織の仕組み。
「態勢」物事に対して前もってとる身構えや態度。
「体勢」体の構え。姿勢。

「体制」とは

「体制」とは、国家・社会・組織の仕組みですから、基本原理や方針によって秩序づけられていなければなりません。

さらにそれは、一時的なものではなく、長期的・継続的な仕組みでなければなりません。

「体制」は、政治支配の様式のことでもあり、「資本主義体制」という使い方をします。

また、医療の分野では、長期的な方針を基に組織立てられたものとして、「救急医療体制」などという使い方をします。

「態勢」とは

「態勢」は「体制」とは違い、一時的な物事に対する身構えや態度のことです。

例えば、一時的に「難民の受け入れ(たいせい)を整える」場合は、「態勢」となります。

冒頭の「当ホテルでは、東京オリンピック・パラリンピックのお客様を万全の(たいせい)でお迎えいたします」 は大会期間中の一時的な受け入れなので、「態勢」となるのです。

「体勢」とは

「体勢」とは「体の構え」「姿勢」ですから、「体制」「態勢」と比べると物理的で、実際に目で確認することができる状態にあります。

例えば、柔道やレスリングで「得意の体勢に持ち込む」といった使い方をしますが、まさに「体」そのものの「構え」が見えてきます。 

「体制」か「態勢」か

それでは、次の例ではどうしょう?

「当社ではお客様への万全のサポート(たいせい)をとっています」

 

この(たいせい)は

「体制」でしょうか?

それと「態勢」でしょうか?

判断のポイントの一つは、この(たいせい)が長期的・継続的なものか、一時的なものかにあります。

長期的・継続的なものであれば「体制」で、一時的なものであれば「態勢」になります。

もう一つのポイントは、「組織」のことを述べているのか、「身構えや態度」のことを述べているのか、にあります。

「組織」のことを述べているのであれば「体制」で、「身構えや態度」のことを述べているのであれば「態勢」になります。

しかし、「お客様への万全のサポート」となると、「体制」とも「態勢」とも取れそうです。

この場合、どちらの漢字を使うかは、書き手の考え方によって決めるしかありません。

ただ、「体制」となると強固な組織がイメージされ、お客様相手のサポートとしては柔軟性がないように感じます。

ですから、筆者としては「態勢」を使いたいと思います。

このように、場合によっては書き手の判断に委ねられる例もあるのです。

「体制」と「態勢」と「体勢」の用例

次に「体制」と「態勢」と「体勢」の一般的な用例を紹介したいと思います。

「体制」の用例

「資本主義体制」

「戦時体制」

「救急医療体制」

「反体制運動」

「ベルサイユ体制」

「経営の体制を立て直す」

「厳戒体制」(デジタル大辞泉)

「厳戒体制をしく」(岩波国語辞典第五版)(「日本語大辞典」講談社)

「幕藩体制」

「体制側」

「新体制」

「社会体制」

「態勢」の用例

「万全の態勢で臨む」 

「態勢を整える」

「厳戒態勢」(NHK放送文化研究所)

「厳戒態勢をしく」 (大辞林第三版)

「受け入れ態勢を整える」

「24時間態勢を取る」

「体勢」の用例

「得意の体勢に持ち込む」 

「不利な体勢」

「崩れた体勢を立て直す」

「警官は射撃体勢を取った」

「飛行機は着陸体勢に入った」

「苦しい体勢から逆転の上手投げを決めた」

「体勢を崩しながらもレフトヒットとなった」

(以上出典元:「大辞林第三版」三省堂、「デジタル大辞泉」コトバンク、岩波国語辞典第五版、「日本語大辞典」講談社、NHK放送文化研究所

まとめ

「体制」と「態勢」と「体勢」の意味の違いと使い分けについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?

今回のポイントをまとめます。

  • 「体制」 → 国家・社会・組織の長期的・継続的な仕組み。 
  • 「態勢」 → 物事に対する一時的な身構えや態度。
  • 「体勢」 → 体の構え。姿勢。

東京オリンピック・パラリンピック期間中は、交通の混雑が予想されます。

私たちも、混雑への態勢を整えておきましょう。

 

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