「固い」と「硬い」と「堅い」の意味の違いと使い分け
ラーメンを注文するときに「麺はかためで」とお願いする方。かなりのラーメン通ですね。
ところで、「麺はかためで」の「かたい」を漢字で書くと「固い」「硬い」「堅い」のどれになるかご存知ですか?
訓読みが同じ(異字同訓)の漢字の使い分けは難しいですね。
そこで今回は、
「固い」と「硬い」と「堅い」の意味の違いと使い分け
についてお伝えすることにしました。
目次
「固い」と「硬い」と「堅い」の意味
国語審議会漢字部会作成の「『異字同訓』の漢字の用法」には、次のように記載されています。
かたい
堅い - 堅い材木。堅炭。手堅い商売。
固い - 団結が固い。固練り。頭が固い。固く信じる。
硬い - 硬い石。硬い表現。
[出典元:文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
また、使い分けについては、「日本語に強くなる本(省光社)」に、
使い分けは、硬い↔やわらかい、堅い↔もろい、固い↔ゆるい、の反対語を考えるとよい。
(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)
とあります。
この二つの分類と「大辞林第三版(三省堂)」を参考にして、「固い」と「硬い」と「堅い」の意味の違いと使い分けを整理してみました。
「固い」の意味
・物と物、人と人がしっかりと合わさっていて容易に離れない。
・心が動揺したり、容易に変わったりしない。
・自分の考えにこだわり、融通がきかない。頑固だ。
「固い」は、容易に離れない、容易に変わらない状態を表しています。
「硬い」の意味
・物が力を加えられても、容易に形や状態を変えない。
・外見がこわばって柔らかみがない。また、緊張していてぎこちない。
・内容がまじめ一方で、面白みがない。かたくるしい。きまじめだ。
「硬い」は、容易に形や状態を変えない、こわばった状態を表しています。
「堅い」の意味
・することに、浮ついたところがなく、信用がおける。
㋐てがたい。堅実だ。
㋑人に秘密をもらさない。
㋒間違いない。確かだ。
・どんな小さなことでも誤りを許さない。厳重だ。きびしい。
「堅い」は、信用できる状態。堅実で間違いがなく確かな状態を表しています。
「固い」と「硬い」と「堅い」の使い分け
「固い」の使い方
「固くひもを結ぶ」
「固い団結」
「固い握手」
「固い決意」
「固く信ずる」
「押し売り固くおことわり」
「頭が固い」
「硬い」の使い方
「硬い鉛筆」
「卵を硬くゆでる」
「硬い表情」
「硬い一方の男」
「硬い話」
「堅い」の使い方
「堅い商売」
「堅く見積もっても一億円はもうかる」
「口の堅い人」
「合格は堅い」
「一万円は堅い」
「堅く禁ずる」
「守りの堅い城」
(以上出典元:「大辞林第三版」三省堂)
「反対語」を用いた漢字の使い分け
ここまで、「固い」と「硬い」と「堅い」の意味の違いと使い分けについて述べてきましたが、それぞれの意味が分かったとしても、その意味を用いて漢字の使い分けするのは難しいと感じました。
そこで、前述の「反対語」を用いて漢字の使い分けをしてみたいと思います。
まずは、冒頭の「麺のかたさ」について考えてみましょう。
「固い」は「ゆるい」の反対語
「硬い」は「やわらかい」の反対語
「堅い」は「もろい」の反対語
「かたい麺」の反対は「やわらかい麺」ですから、この場合は「硬い麺」になります。
同じように、
「かたい表情」の反対は「やらわかい表情」ですから、「硬い表情」。
「かたい決意」の反対は「ゆるい決意」ですから、「固い決意」。
「かたくひもを結ぶ」の反対は「ゆるくひもを結ぶ」ですから、「固くひもを結ぶ」。
「守りのかたい城」の反対は「守りのもろい城」ですから、「守りの堅い城」。
なるほど、分かりやすいですね。
「かたい商売」の反対は「もろい商売」。(?)
「合格はかたい」の反対は「合格はもろい」。(?)
ぴったりとはいきませんが、意味は分かります。
まとめ
「固い」「硬い」「堅い」の違いをまとめました。
かたい | 意味 |
固い | ・物と物、人と人がしっかりと合わさっていて容易に離れない。 ・自分の考えにこだわり、融通がきかない。頑固だ。 ・反対語は「ゆるい」。
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硬い | ・物が力を加えられても、容易に形や状態を変えない。 ・外見がこわばって柔らかみがない。ぎこちない。 ・反対語は「やわらかい」。
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堅い | ・することに、浮ついたところがなく、信用がおける。 ・反対語は「もろい」。
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「漢字の意味を用いた使い分け」も「反対語を用いた使い分け」も全てにぴったりと当てはまるものではありませんでした。
「漢字は日本語の中で習慣的に使い分けている」ということもあるようですので、あまり固く考えない方がいいのかもしれません。
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