「ほか」と「他(ほか)」と「外(ほか)」の正しい使い分け。公用文の原則も。
- 「(ほか)に意見はありませんか?」
- 「思いの(ほか)困難な仕事でした」
- 「山田様(ほか)3名」
上記のような文を書くとき、(ほか)という言葉をどのように書きますか?
「他」や「外」、平仮名で「ほか」と書くことができますが、内容によっては「他」なのか「外」なのか迷うことがあります。
ということで、今回は、「ほか」と「他(ほか)」と「外(ほか)」の正しい使い分けについて調べてみたいと思います。
目次
「ほか」の意味
「ほか」を大辞林第三版で引いてみました。
①ここではない別の所。よそ。
③ある範囲を超えたところ。
(出典元:「大辞林第三版」三省堂)
①と②の「ここではない別の所。よそ。」「それ以外のこと・もの。…を除いて。」という意味で使われている漢字は「他」です。
③の「ある範囲を超えたところ。」という意味で使われている漢字は「外」です。
この意味の違いによって使い方を分けてみました。
「他(ほか)」と「外(ほか)」の使い分け
「他」を「別」と言い換えることができます。もしも、「他」と「外」の使い分けに迷ったら、「別」で言い換えてみてください。
また、「外」には「範囲を超えている」という意味があります。
それぞれの意味を考えながら、次の例文を読んでみてください。
「他(ほか)」の使い方
- 「他で探してください」
- 「他に方法がない」
- 「それより他にはない」
- 「どこか他を探す」
- 「他へ行く」
- 「他の人に頼む」
「外(ほか)」の使い方
- 「思いの外高く売れた」
- 「恋は思案の外」
- 「思いの外困難だ」
- 「想像の外の出来事」
(以上出典元:「大辞林第三版」三省堂、「デジタル大辞泉」小学館:goo辞書)
例文では「他」と「外」の漢字を使っていますが、必ずしも漢字を使わなければならないという決まりはありません。むしろ、公用文では「他」という漢字を使わず平仮名の「ほか」と書くことを原則としています。
公用文での「他(ほか)」と「外(ほか)」の使い分け
平成22年の常用漢字表の改正に伴って、「他」を「ほか」と読んでもよいということになったのですが、改正に伴う通知によって、法令や法令以外の公用文では「ほか」という読みで「他」という漢字は使わないことになりました。
そのため、公用文での「その他」は「そのた」としか読めませんし、「このほか」を「この他」とは書けません。「ほか」と読むときは、平仮名を使うということなのです。
同じように、常用漢字表では、「外」を「ほか」と読みますが、法令や法令以外の公用文では、「殊の外(ほか)」「何某外(ほか)○名」などの表記以外は「外」は使いません。
こうした公用文に関する諸通知等について調べてみました。
まず、「他」の読み方についてですが、常用漢字表の本表に次のようにあります。
漢字 | 音訓 | 例 | 備考 |
外 | ガイ ゲ そと ほか はずす はずれる | 外出,海外,除外 外科,外題,外道 外,外囲い 外,その外 外す,踏み外す 外れる,町外れ
| ⇔他 |
他 | タ ほか | 他国、自他、排他的 他、○○の他 | ⇔外 |
(出典元:新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)文化庁)
※黄色マーカーは筆者
このように、「外」と「他」は訓で「ほか」と読めるのですが、「その外」「その他」は「そのほか」と平仮名で書くことが「公用文における漢字使用等について」 (平成 22 年 11 月 30 日内閣訓令第1号)に記載されています。
公用文における漢字使用等について
1 漢字使用について
(2)「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては、次の事項に留意する。
キ 次のような語句を、( )の中に示した例のように用いるときは、原則として、仮名で書く。
例 ほか(そのほか…、特別の場合を除くほか…)
(出典元:新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)文化庁)
※黄色マーカーは筆者
次の「文部科学省用字用語例」は、文部科学省で公用文を作成するときの標準を示したものです。これには、「ほか」の書き表し方や使い方が記載されています。
見出し | 表外漢字・表外音訓等 | 書き表し方 | 備考 |
ほか | 他 | 外 ほか | 殊の外,何某外○名 特別の場合を除くほか,ほかの意見,ほかから探す,ほかから連れて来る |
(出典元:新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)文化庁)
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以上、公用文での「他(ほか)」と「外(ほか)」の使い分けについて調べてみましたが、これらの原則に従って、冒頭の例文を完成してみましょう。
「ほかに意見はありませんか?」
「思いの外困難な仕事でした」
「山田様外3名」
「ほか」は、もともと「他」の字で書く習慣が強かったもの、また「外」と書くと「そと」と読み間違えられるおそれのあるものなどの場合に用います。
公用文以外での「他(ほか)」と「外(ほか)」の使い分け
それでは、公用文以外では、どのように使い分けているのでしょうか。
朝日新聞の用語の手引きには次のようにありました。
ほか
=外[範囲のそと]思いの外、殊の外、想像の外、もっての外
=他[それとは異なるもの]この他、その他、他の人にも尋ねる
(出典元:「朝日新聞の用語の手引き」2015 朝日新聞出版社)
朝日新聞の用語の手引[改訂新版] [ 朝日新聞社用語幹事 ] 価格:1,980円 |
この手引きに従って、冒頭の例文を完成してみましょう。
- 「他に意見はありませんか?」
- 「思いの外困難な仕事でした」
- 「山田様外3名」
まとめ
「ほか」と「他(ほか)」と「外(ほか)」の正しい使い分け、についてお伝えしてきましたが、いかがでしたか。
今回のポイントをまとめます。
- 「他」には、「それとは異なるもの」という意味がある。
- 「外」には、「範囲のそと」という意味がある。
- 「ほか」と平仮名で書いてもよい。
- 公用文では原則として「他」は使わない。
「他」と「外」の意味の違いを考えて使い分けることが大切です。
今回は、思いの外長い文章になってしまいました。この他にもまだお伝えしたいこともありますが、それはまたほかの機会にしたいと思います。(*^_^*)
「ほかの人には言わないでください」の「ほかの人」は「他の人」と表記したら間違えですか?
個人のメールです
ご質問ありがとうございます。
個人のメールであれば「他の人」と書いても何ら問題ありません。
公用文では「外」か「ほか」を使います。
文中に公用文以外の「他」と「外」の文例を挙げていますので、参考にしていただけたら幸いです。
「他の人」の読み方は「たの人」ですか?「ほかの人」ですか?訓読みと音読みの両方で読んでもいいのですか?
ご質問ありがとうございます。
「他」の読み方について常用漢字表の本表に「タ」「ほか」とありますから、「たの人」「ほかの人」と読むことができます。
ただ、音読(声に出す)するときは「ほかの人」と読んだ方が印象が良いと思います。
個人のメールで「ほかの人」と書いた場合「他の人」「外の人」という2つの意味が入ってくるのですか?
ご質問ありがとうございます。
朝日新聞の用語の手引きには、
ほか
=外[範囲のそと]思いの外、殊の外、想像の外、もっての外
=他[それとは異なるもの]この他、その他、他の人にも尋ねる
とあります。
この用例からすると、「ほかの人」は「他の人」となります。
公的文章にてお取引を数回したしたことを報告する際、初日以降は「ほか」を使いまとめたい時(ex.4月20日ほか)は、「外」と「他」,どちらが適していますでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
『公用文での「他(ほか)」と「外(ほか)」の使い分け』の項をご覧ください。
「文部科学省用字用語例」の「ほか」の項目に「何某外○名」とあります。
この具体例として「山田様外3名」を挙げました。
「4月20日ほか」は、この用例にあたると思います。
初めて見る用例で、参考になりました。
ありがとうございました。
民間企業での取引上かわす書類において他と外のどちらかを使用するのがよいかご教示いただけますでしょうか。
たとえば「●●局他10局」を、合計11局という意味にとらえて使用しています。
これは間違っていますでしょうか。
正しくは「●●局外10局」とするべきでしょうか。また「●●局 他10局」とスペースをあけると意味は変わりますか。
●●局とその他10局に商品を納品するということを示したいのですが。
どうぞよろしくお願いします。
ご質問ありがとうございます。
「●●局とその他10局に商品を納品する」とは、言い換えれば「●●局とそれ以外の10局に商品を納品する」ということですね。
だとすれば、「何某外○名」の用例にしたがって「外(ほか)」を用いた方がよいかと思います。
不動産関係などで使う「外○筆」も同じです。
改めて辞書を引いてみましたが、「ほか」には「それ以外」という意味があることからも「何某外○名」の用例を使った方がいいと思った次第です。
しかしながら、と「他○名」といった使い方も多数く見られ、もはや慣用化されているようですので間違いとは言い切れません。
ただ、筆者としては公用文に準じた使い方が望ましいと考えます。
スペースについては、入れても入れなくても意味は変わりません。
企業における文書作成について、筆者も学ぶ必要があると思いました。
ありがとうございました。
そのため、公用文での「その他」は「そのほか」としか読めませんし、
とありますが、「そのた」としか読めませんしの間違いではありませんか?
ここのサイト以外、「他」という感じ自体公用文では使ってはいけない、という内容を確認できませんでした。根拠の通知文はどのように検索すればでてきますでしょうか。
コメントありがとうございました。
ご指摘のとおり、「『そのほか』としか読めませんし」は、「『そのた』としか読めませんし」の間違いです。訂正いたします。
「他」という漢字は公用文では使えない、というのではなく、「その他」は原則として「そのほか」と仮名で書くということを述べているつもりです。根拠は文化庁が出している「新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)」の「公用文における漢字使用等について」にあります。
今後もお気付きの点など教えてください。
追伸
「『他』という漢字は使わないことになりました。」という表現が誤解を与えたと思います。
「『ほか』という読みで『他』という漢字は使わないことになりました。」と訂正しました。