「…士」と「…師」と「…司」の意味の違いと「資格の名称」

「栄養士」「美容師」「児童福祉司」は、同じ「シ」の付く資格の名称ですが、この「士」と「師」と「司」の意味はどう違うのでしょうか。

今回は、「…士」と「…師」と「…司」の意味の違いと「資格の名称」についてお伝えします。

「大辞林第三版」「日本語に強くなる本」等で調べてまとめてみました。

「士」と「師」と「司」の意味

「士」とは

①男子。特に、学問・道徳を修めた男子についていう。 

②さむらい。武士。

③古代中国で、大夫と庶民との間に位した身分。

「士」は、「事を処理する才能のある者」で、「才能をもって官に使える者」のことを指します。

そこから、専門の技術・技芸を修めた者を「士」というようになり、称号や職業名に付けました。

例えば、「楽士、騎士、義士、紳士、闘士、武士、弁士、名士、勇士、力士、烈士」などです。

また、「士」は、次のような「資格の名称」にも使われています。

「士」の付いた資格の名称

栄養士、介護福祉士、海技士、技術士(「建設部門」など)、技能士(「造園」など)、気象予報士、救急救命士、行政書士、計装士、言語聴覚士、建築士、航空士、公認会計士、歯科技工士、司法書士、社会福祉士、社会保険労務士、税理士、潜水士、測量士、土地家屋調査士、範士・教士・錬士(剣道など)、ビルクリーニング技能士、不動産鑑定士、弁護士、弁理士、保育士、ボイラー技士、無線技士、理学療法士、臨床工学技士 など。

なお、これらはみな国家試験等によって取得できる「資格の名称」です。

「師」とは

①学問や芸能などを教える人。先生。師匠。 

②僧侶・神父など宗教上の指導者。

③中国、周代の軍制で、二五〇〇人を一師という。転じて、軍隊、戦争。

「師」は「一師(二五〇〇人の軍隊)」の「師」で「人々を集めた大集団」のことです。

このことから転じて、「人の集団を導く者」「教え導く者」をいうようになり、一芸に秀でた者(技術者・専門家)を「師」というようになりました。

それが、「技師、教師、講師、牧師、伝導師、仏師、導師、漁師、猟師、講釈師、人形師、能楽師、表具師、宣教師」などです。

「師」は今、次のような「資格の名称」に使われています。

「師」の付いた資格の名称

医師、衛生検査技師、看護師、技師、きゅう師、助産師、准看護師、歯科医師、獣医師、診療放射線技師、調教師、調理師、調律師、電気技師、伝道師、導師(仏教)、はり師、美容師、牧師(キリスト教プロテスタント系。カトリックは「神父」)、保健師、薬剤師、理容師、臨床検査技師 など。

これらも国家試験等によって取得できる「資格の名称」です。

「司」とは

律令制で、省に属し、職・寮に次ぐ役所。

「司」は、元々は「役所」の意味で、「その役に責任をもつ者」を指しています。

「司」は、その役目を受け持つ人の職務の名称に付きました。

「行司、宮司、郡司、国司、祭司、斎院司(さいいんし)、造酒司(さけのつかさ、ぞうしゅし)、鋳銭司、兵馬司」などです。

「司」の付いた資格の名称

こうした言葉から、

児童福祉司、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司、保護司

という職名が生まれました。

※出典元

  • 「大辞林第三版」三省堂
  • 「日本語に強くなる本」省光社
  • 「朝日新聞の用語の手引き(2015版)」朝日新聞出版
  • 教育出版「言葉のてびき」

まとめ

「…士」と「…師」と「…司」の意味の違いと「資格の名称」についてお伝えしてきましたが、いかがでしたか。

今回のポイントをまとめます。

「…士」 → 「事を処理する才能のある者」

「士」の付いた資格の名称 → 栄養士、建築士、歯科技工士、測量士、弁護士、ボイラー技士、理学療法士 など。


「…師」 → 「教え導く者」

「師」の付いた資格の名称 → 医師、看護師、診療放射線技師、調理師、調律師、はり師、美容師、薬剤師 など。


「…司」 → 「役所でその役に責任をもつ者」

「司」の付いた資格の名称 → 児童福祉司、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司、保護司 など。

「士」と「師」と「司」が付いた「資格の名称」。「社会福祉士」と「児童福祉司」など、同じ分野の仕事なのに「士」だったり「司」だったり、使い分けに難しさを感じるテーマでした。

補足 

「社会福祉士」と「児童福祉司」の違い

「社会福祉士」と「児童福祉司」の違いについて調べてみました。

関係する法律に「社会福祉士及び介護福祉士法」と「児童福祉法」がありました。

社会福祉士及び介護福祉士法

第四条 社会福祉士試験に合格した者は、社会福祉士となる資格を有する。(社会福祉士試験)

第五条 社会福祉士試験は、社会福祉士として必要な知識及び技能について行う。(社会福祉士試験の実施)

第六条 社会福祉士試験は、毎年一回以上、厚生労働大臣が行う。

児童福祉法

第十三条 都道府県は、その設置する児童相談所に、児童福祉司を置かなければならない。

第二項 児童福祉司の数は、政令で定める基準を標準として都道府県が定めるものとする。

第三項 児童福祉司は、都道府県知事の補助機関である職員とし、次の各号のいずれかに該当する者のうちから、任用しなければならない。

つまり、「社会福祉士」とは、社会福祉士試験(国家試験)に合格した人のことをいい、「児童福祉司」とは、都道府県が任用した人のことをいいます。

まさに、「社会福祉士」の「士」は「専門の技術・技芸を修めた者」であり、「児童福祉司」の「司」は「役所でその役に責任をもつ者」であることが分かりました。


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「…士」と「…師」と「…司」の意味の違いと「資格の名称」” に対して4件のコメントがあります。

  1. 珍竹林 より:

    「士」の付いた資格の名称に記述されている「ビルクリーニング技師」は、「ビルクリーニング技能士」が正しいのではないですか?

    1. kakkou より:

      確かに「全国ビルメンテナンス協会」等のホームページに「ビルクリーニング技能士」と記載されていました。
      訂正させて頂きます。
      教えて頂きありがとうございました。

  2. 000 より:

    上記コメントと同様の指摘ですが、「士」の付いた資格の名称に記述されている「臨床工学士」は、「臨床工学技士」の間違いではないでしょうか。

    1. kakkou より:

      これは、出典元から転記する際の私のミスです。
      訂正いたします。
      教えて頂きありがとうございました。

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