「回り」と「周り」の意味の違いと使い分け
さて問題です。
次の文の(まわり)を漢字にしてください。
「公園の(まわり)を 一(まわり)する」
正解は、
「公園の(周り)を 一(回り)する」
です。
このように、「まわり」には、「周り」と「回り」の二つの漢字があるので、どちらを使えばいいのか迷うことがよくあります。
今回は、「回り」と「周り」の意味の違いと使い分けについてお伝えいたします。
はじめに、「回」と「周」の漢字の意味を「大辞林第三版」で引いてみました。
目次
「回」と「周」の漢字の意味
「回」の意味
① まわる。まわす。
② もとへもどる。もどす。
③ ふりかえる。
④ 繰り返し行われる事柄。度。たび。
⑤ 中国少数民族の一。回族。中国各地に住む。
(出典元:「大辞林第三版」三省堂)
「周」の意味
① ゆきわたる。ゆきとどく。
②まわり。まわる。めぐる。
③ 中国の王朝の名。
(出典元:「大辞林第三版」三省堂)
「回」と「周」の主な意味には違いがあります。「回」の「まわる」に対して「周」は「まわり」となっています。
それでは、最初に「まわり」について「大辞林第三版」を紐解いてみましょう。
「まわり」とは
「まわり」を引くと【回り・廻▾り・周り】とありました。
「廻▾り」は表外漢字ですので、今回は扱いません。
「回り」の意味
「回り」には次の意味がありました。
名詞としての「回り」には、
①「まわること」「まわり方」「回転」の意味があり、「前回り」「小回りがきく」「大回りする」といった使い方をします。
②「ある範囲に行き渡ること、広がること」という意味もあり、「火の回りが速い」などと使います。
③「順に移って行くこと」という意味で、「得意先回り」などとも使います。
④「ある地点を通って行くこと」「直接行かないで、別の地点を通ること」という意味で、「遠回り」「北極回り」と使います。
⑤「それに関連のある事柄」という意味で、「水回り」「足回り」と使います。
また、「回り」は助数詞として次のように使われます。
「時計の短針は二四時間で二回りする」
「彼は僕より一回り下だ」
「一回り小さいサイズはありませんか」
「人間のスケールが一回りも二回りも違う」
「周り」の意味
「周り」には、
①「周囲」「へり」「ぐるり」という意味があり、「池の周り」「焚火の周りに集まる」と使います。
②「付近」「近辺」「あたり」という意味もあり、 「周りの人の意見をきく」 「家の周りにはまだ自然が残っている」などと使います。
「まわる」とは
次に、動詞の「まわる」を引いてみると【回る・廻▾る】とありました。
辞書には「周る」という表記はありません。「周る」は漢字表にない読み(表外音訓)です。
つまり「周り」は名詞としてのみ使われるということです。
「回る」の意味
「回る」には多くの意味と使い方がありました。
①「回転する」という意味で、「風車(かざぐるま)がくるくる回る」「扇風機が回っている」
②「物の周囲に沿って円を描くように動く」という意味で、「地球は太陽のまわりを回っている」「風が西から北へ回る」
③「何か所かを順に移動して、出発点に戻る」「順に従って移る」という意味で、「ヨーロッパ五か国を回る」「回覧板が回る」「書類が経理課に回る」
④「遠回りの道をとって行く」という意味で、「急がば回れ」。
⑤「直接行かないで別の所に寄る」という意味で、「得意先を回ってから会社に行く」 「帰りに図書館に回る」
⑥「別の位置・立場に移る」という意味で「裏方に回る」「敵に回る」
⑦「番・時期などが順に移る」という意味で、「掃除当番が回ってくる」
⑧「ある範囲に行き渡る、広がる」という意味で、「毒が回る」「手が回る」
⑨「十分にはたらく」意味で、「舌が回らない」「知恵が回る」
その他、「その時刻を過ぎる」ことを「五時を回る」、「資金が利息を生む」ことを「五分(ぶ)で回る」と言います。
そのあたりを…しながら移動する、…をして歩くなどの意味で、「うわさを触れ回る」 「探し回る」と使います。
(以上出典元:「大辞林第三版」三省堂)
冒頭の問題
「公園の(周り)を 一(回り)する」
の「公園の周り」は「周囲」であり「一回り」の「回り」は助数詞として使われていることが分かりました。
「回り」と「周り」の使い方
「回り」と「周り」の使い方について、「朝日新聞の用語の手引き」に次のようにありました。
まわり
=回り[巡回、回転]内回り、金回り、首回り、潮回り、胴回り、一回りする、火の回りが早い、回り合わせ、回り込む、回り舞台、回り道、回り持ち、回り廊下、幹回り、水回り、身の回り
=周り[周囲、周辺]家の周り、池の周りを回る、周りがうるさい
まわる(周る▴、廻る▵)→回る-回れ右
(出典元:「朝日新聞の用語の手引き」2015年版 朝日新聞出版)
まとめ
「回り」と「回り」の意味の違いと使い分けについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
今回のポイントをまとめます。
・「回り」には、「回転する」「巡回する」などの意味がある。
「内回り」「胴回り」「一回りする」「火の回りが早い」「回り道」「水回り」「身の回り」などと使う。
・「周り」には、「ゆきわたる」「周囲」などの意味がある。
「池の周り」「周りの人」「周りがうるさい」など、周囲・周辺の意味の場合だけ「周り」と書く。
※「まわり」は、周囲・周辺の意味の場合だけ「周り」と書き、それ以外の意味の場合は「回り」と書くのが一般的です。
※「まわる」は、「回る」と書きます。