「聞く」と「聴く」と「訊く」の意味の違いと使い方
「聞く」と「聴く」と「訊く」。
- 話をきくのは「聞く」
- 音楽をきくのは「聴く」
- 人に何かを尋ねるのは「訊く」
と、自分なりに使い分けてきたつもりですが、その意味や根拠を問われると上手く説明できるか自信がありません。
そこで、今回は、「聞く」と「聴く」と「訊く」の意味の違いと使い方について調べてみることにしました。
目次
「聞く」と「聴く」と「訊く」の意味
はじめに「日本語大辞典(講談社)」を引いてみました。
本書では「聞く」と「聴く」を分けて記載し、「訊く」については「聞く」の中で解説していました。完結で分かりやすかったです。
「聞く」と「訊く」
【聞く】
①ことばや音を耳でとらえる。hear
「話を聞く」
「うわさを聞く」
②承知する。聞きいれる。listen to
「親の言うことを聞く」
「たのみごとを聞く」
③⦅「訊く」とも⦆たずねる。ask
「住所を聞く」
「聞くは一時の恥」
④味わいわける。taste ; smell
「香を聞く」
(出典元:「日本語大辞典」講談社)
「聴く」
【聴く】
耳を傾けて聞く。listen
「音楽を聴く」
「市民の声を聴く」
(出典元:「日本語大辞典」講談社)
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「聞く」と「聴く」と「訊く」の違い
「聞く」と「訊く」
「聞く」は言葉や音を耳で感じ取ることで、自然に耳に聞こえてくる意味があります。
「聞く」には、「親の言うことを聞く」「たのみごとを聞く」のように、承知する、従う、聞き入れる、受け入れる、という意味もあります。
また「聞く」には、「住所を聞く」「聞くは一時の恥」のように、尋ねる、質問する、という意味もあり、「訊く」を使うことができます。
しかし、「訊く」は常用漢字表外の漢字であり「きく」という読みはありません。したがって「訊く」は公用文には使えません。
その他、「聞く」は「香を聞く」「酒を聞く」のように、香りや味を味わって識別する意味でも使われます。この場合(「利く」とも書く)と広辞苑にありました。「聞き酒」は「利き酒」と書くのが一般的だそうです。
「聴く」
「聴く」は自分から積極的に耳を傾けて聞くことです。
「音楽を聴く」「市民の声を聴く」などと使われています。
「事情聴取」「公聴会」「聴診器」「聴音器」などの熟語があるように、耳を傾けて、注意を集中して聞き取る意味で使われます。
しかし、「きき耳を立てる」「盗みぎき」「ききほれる」などは、注意を集中していても「聞く」が使われています。
「聞く」と「聴く」と「訊く」の使い方
文部科学省用字用語例には「聞く」と「聴く」の具体的な使用例が示されています。
見出し | 表外漢字・表外音訓等 | 書き表し方 | 備考 |
きく | 聞く
聴く | 物音を聞いた、うわさを聞く 道順を聞く 音楽を聴く、国民の声を聴く |
(出典元:「文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)」)
また、「毎日新聞用語集」には次のような用例がありました。
聞〔一般用語〕意見・考え・要求を聞く、うわさを聞く、聞き捨て、聞き取り調査、聞き流す、聞く耳持たぬ、立ち聞き、盗み聞き、話し声を聞く、胸の内を聞く、物音を聞く
聴〔特殊用語。身を入れてきく〕音楽・講義・国民の声などを聴く、事情を聴く、レコードを聴く
(注)「聞」「聴」はきく態度によって使い分ける。どちらでもよいときはなるべく「聞」を使う。
(出典元:「新版 毎日新聞用語集」毎日新聞社)
つまり、耳を傾けて、注意を集中して聞き取るのが「聴く」でそれ以外は「聞く」で良いということになります。
もしも判断に迷ったときは、「聞く」を使っておけば間違いないと理解しました。
以下、辞書等にある用例を列記します。
「聞く」の用例
- 「話を聞く」
- 「うわさを聞く」
- 「親の言うことを聞く」
- 「たのみごとを聞く」
- 「住所を聞く」
- 「聞くは一時の恥」
- 「香を聞く」
- 「意見を聞く」
- 「考えを聞く」
- 「要求を聞く」
- 「聞き捨て」
- 「聞き取り調査」
- 「聞き流す」
- 「聞く耳持たぬ」
- 「立ち聞き」
- 「盗み聞き」
- 「話し声を聞く」
- 「胸の内を聞く」
- 「物音を聞く」
「聴く」の用例
- 「音楽を聴く」
- 「CDを聴く」
- 「市民の声を聴く」
- 「国民の声を聴く」
- 「講義を聴く」
- 「事情を聴く」
「訊く」の用例
※公用文では使わない。
- 「名前を訊く」
- 「迷って道を訊いた」
- 「自分の胸に訊け」
- 「彼の都合を訊いてみる」
まとめ
今回のポイントをまとめました。
「聞く」とは
- 言葉や音が自然に耳に聞こえてくること。
- 承知すること、従うこと、聞き入れること、受け入れること。
- 尋ねること、質問すること。
「聴く」とは
- 耳を傾けて、注意を集中して聞き取ること。
「訊く」とは
- 尋ねること、質問すること。(※公用文では使わない。)
「聞く」と「聴く」は、その人の「聞き方」「聞く態度」によって使い分けられます。
どちらを使っても良いと思われるときは、「聞く」を使った方が良いようです。
「聞く」「聴く」「訊く」など、同訓異字の理解を深めることは、言葉の選択力向上に繋がると思います。是非いろいろな場面で使ってみたいものです。