「よい」と「いい」の違いと使い方

「天気がよい

「天気がいい

 

と、文章にするときに「よい」なのか「いい」なのか迷うことがあります。

そこで今回は、「よい」と「いい」の違いと使い方について調べてみることにしました。

 

「良い」と「善い」の使い方

「よい」について、「朝日新聞の用語の手引き」に次のように記載されています。

よい

良い〔一般用語〕気分が良い、成績が良い、手際が良い、仲良し、品質がよい、良い本悪い本

善い〔特殊用語。徳性〕善い行い、世のために善いことをする

(出典元:「朝日新聞の用語の手引き」朝日新聞出版)

このように「○○が良い」「良い○○」のときは「良」という漢字を使っています。

また、徳性(道徳をわきまえた正しい品性)に関する場合は「善」という漢字を使っています。

「よい」の使い方

それでは、「よい」という平仮名を使うのはどんなときなのでしょう。

「よい」について日本語大辞典を引いてみると、

よい【良い・善い・∇好い】

⑬⦅動詞の連用形について⦆…しやすい。…につごうがよい。「歩きよい靴」

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

そして、参考として、

口語の終止形・連体形は多く「いい」も用いるが、「よい」のほうが改まった言い方となる。

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

とありました。

動詞の連用形は、「ます・た(だ)」「て(で)」が続くのだから、「住みよい」「…してよい」なども該当します。

小説などでも「踊りよい」(谷崎潤一郎)「書きよい」(志賀直哉)などと使われているようです。

ここまでをまとめると、

  • 「○○がよい」「よい○○」のときは「良い」を使う。
  • 徳性に関する場合は「善」を使う。
  • 動詞の連用形につくときは「よい」を使う。

 

となります。

「よい」と「いい」の使い分け

それでは、「よい」と「いい」はどのように使い分ければいいのでしょうか。

口語の終止形・連体形は多く「いい」も用いるが、「よい」のほうが改まった言い方となる。

と前述しましたが、

「いい」について日本語大辞典を引いてみると、

いい【良い・善い・∇好い】

⦅「よい」の転。終止・連体形だけを使う⦆

①よい。「もういいかい」「いい線行ってる」

②皮肉の気持ちで「ひどい」の意味に使う。「いい迷惑だ」

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

つまり、

「いい」は口語形(会話で用いられる言葉)の「よい」が変化したもので、「よい」よりもくだけた言い方である、ということです。

形容詞「よい」「いい」の活用を見みると、

未然連用終止連体仮定命令
よかろウよかっタよいよいトキよけれバ
いいいいトキ

 

終止形の「よい」「いい」は、

「~してよい」とも使うし「~していい」とも使うし、意味も同じです。

同じように、

  • 「~したほうがよい」に対して「~したほうがいい」
  • 「~すればよい」に対して「~すればいい」

といった使い方をします。

この場合、「よい」は書き言葉的で「いい」は話し言葉的と言われています。

口語形の「よい」が人々の会話の中で使われているうちに、少しずつ変化して「いい」になったようです。

「ええ」「ええよ」「ええな」などの方言は、「よい」が「いい」に変化していく中で生まれた言葉だと考えられています。それが今も残っているということなんですね。

連体形の「よい」と「いい」は、

  • 「よい男」⇔「いい男」
  • 「よい女」⇔「いい女」
  • 「よい顔」⇔「いい顔」
  • 「よい感じ」⇔「いい感じ」
  • 「よい加減」⇔「いい加減」
  • 「よい気なもの」⇔「いい気なもの」
  • 「よい仲」⇔「いい仲」
  • 「よい迷惑だ」⇔「いい迷惑だ」
  • 「よい気味だ」⇔「いい気味だ」
  • 「よい薬になる」⇔「いい薬になる」
  • 「よい子になる」⇔「いい子になる」
  • 「よいようになる」⇔「いいようになる」
  • 「よい面の皮」⇔「いい面の皮」
  • 「よい年をしている」⇔「いい年をしている」
  • 「よい恥さらし」⇔「いい恥さらし」
  • 「よいざまだ」⇔「いいざまだ」
  • 「よい目が出る」⇔「いい目が出る」

となっていますが、実際の場面では「いい」が多く用いられているようです。

改まった「よい」よりも、くだけた「いい」の方が状況に合っているということでしょうか。

SNSの「いいね!」はまさにくだけた言い方ですね。「よいね!」ではピンときません。

反対に「いい子のみなさん」は「よい子のみなさん」と言った方がぴったりしていると思うのですが、いかがでしょうか? 

公用文での使い方

ところで、公用文では、「よい」はどのように使われているのでしょうか。

「文部科学省用字用語例」には、次のように記載されています。

見出し表外漢字・表外音訓等書き表し方備考
よい良い

善い

…(て)よい

頭が良い、良い成績

善い行い

連絡してよい

〔出典元:「文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)」〕

また、平成22年11月30日付け内閣訓令第1号「公用文における漢字使用について」には、

1 漢字使用について

⑵ 「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては、次の事項に留意する。

キ 次のような語句を、(  )の中に示した例のように用いるときは、原則として、仮名で書く。

例 ・・・てよい(連絡してよい)

〔出典元:「文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)」〕

とあります。

つまり、「よい」の漢字表記は「良」「善」であり、平仮名表記は「よい」であるということです。そして「良」にも「善」にも「いい」という読みは認められていないことが分かります。

まとめ

今回のポイントをまとめました。

公用文では

  • 「○○がよい」「よい○○」は「○○が良い」「良い○○」と書く。
  • 徳性に関する場合は「」を使う。
  • 「よい」は「…(て)よい」のように使う。

私的文書では

  • 「よい」と「いい」の両方が使われている。
  • 「いい」は「よい」よりもくだけた言い方

学校や仕事などで書く文書は、国や新聞社等が示す用語例に従って書いていれば間違いないと思います。

それ以外の私的な文書であれば、発信する相手や状況に応じて自由に書いてかまわないと考えます。

参考資料▼

教育出版中学国語「言葉のてびき」

毎日ことば

 

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