「保証」と「保障」と「補償」の意味の違いと使い分け

新型コロナウイルス感染に伴って、新聞報道等で「学力保証」「学習保障」という言葉をよく見聞きします。

ほかにも「基礎学力の保障」「教育の質の保証」などという言い方もありますが、「保証」と「保障」とでは何がどう違うのでしょうか?

また、「休業補償」という言葉もよく見聞きします。

ということで、今回は「保証」と「保障」と「補償」の意味の違いと使い分けについて調べてみることにしました。

「保証」と「保障」の意味

まずは、「大辞林第三版(三省堂)」で「保証」と「保障」を引いてみました。

【保証】

①まちがいなく大丈夫であるとうけあうこと。まちがいが生じたら責任をとると、約束すること。

②債務者が債務を履行しない場合、これに代わって債務を履行するという義務を負うこと。

【保障】

①責任をもって安全を請け合い、一定の地位や状態を保護すること。

②ささえ防ぐこと。また、そのもの。

(出典元:「大辞林第三版」三省堂)

また、「日本語に強くなる本(省光社)」では「保証」と「保障」を次のように解説しています。

【保証】

人・物について、欠陥を生じた場合、他人におよぼす損害の責任を引き受けること

【保障】

ある状態・地位が害を受けないように守ることを約束すること

(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)

「保証」と「保障」の違い

「保証」には二つの意味があります。

一つは、「間違いなく大丈夫であると請け合うこと。間違いが生じたら責任をとると、約束すること」で、「品質を保証する」「彼の人柄については保証する」などと使います。

※「請け合う」とは「責任をもって引き受けること」

もう一つは、「債務者が債務を履行しない場合、これに代わって債務を履行するという義務を負うこと」で、「借金の保証人」などと使います。

「保障」は、「責任をもって安全を請け合い、一定の地位や状態を保護すること」で、「国家の安全を保障する」「社会保障」などと使います。

「保証」と「保障」の違いを短くまとめると、

  • 「保証」は、間違いなく責任をもって引き受けること。
  • 「保障」は、地位や状態を守ること。

となり、これは使い分けのポイントにもなります。

「保証」と「保障」の使い分け

それでは、具体的に「保証」と「保障」の使い分けについて見てみましょう。

「朝日新聞の用語の手引き(朝日新聞出版)」には次のように記されています。

保証

〔請け合う、損害の責めを負う〕

保証金、保証小切手、保証書、保証小切手、保証書、保証責任、保証付き、保証人、保証の限りでない、身の安全を保証する、身元を保証する、利益を保証する、連帯保証

保障

〔立場・権利などが侵されないように守る〕

安全保障、権利保障、最低生活を保障する、社会保障、自由の保障、人権を保障する、身分保障

(出典元:「朝日新聞の用語の手引き」朝日新聞出版)

「安全をホショウする」といったとき、単に耳で聞いただけでは「保証」なのか「保障」なのか分かりにくい場合があります。

そういった場合は前後の文脈で判断するしかありません。通常「身の安全はホショウできない」は「保証」、「国家の安全をホショウする」は「保障」になります。

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「学力の保証」と「学習保障」

「学力の保証」

「○○市教委は1カ月以上の休校で学力の保証ができないなどを理由に挙げた」という新聞記事がありました。

ここでは、「学力の保証」を「児童生徒の学力を間違いなく責任をもって引き受ける」という意味で使っていることが分かります。

「学習保障」

「文部科学省は2020年4月21日、臨時休校中の学習保障について、全国の教育委員会などに通知した」という記事もありました。

こちらの「学習保障」は「児童生徒の学習の状態が害を受けないように守る」という意味で使われています。

児童生徒の学習状況には、家庭環境・学習環境・心身の状態等が含まれていています。

その状態に問題があったときにそれを改善し児童生徒の学習を支援していくのが「学習保障」で、指導方法の工夫・改善や補充学習や発展的学習などによって、児童生徒の学力向上を責任をもって引き受けるのが「学力の保証」と理解しました。

休校が続いて1カ月以上も対面した授業ができなくなったのですから、学力の保証を危ぶむのも無理のないことだと思います。

 

「補償」の意味と使い方

「補償」も「保証」「保障」と同じ同音異義語で、「日本語に強くなる本(省光社)」では次のように解説しています。

【補償】

公務、その他の業務によって生じた障害、公共の必要、天災などによって生じた財産上の損害を、主にお金でつぐなう意。

(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)

また、その使い方について「朝日新聞の用語の手引き(朝日新聞出版)」に次のように記されています。

補償

〔損害を補い償う〕

遺族補償、刑事補償、国家補償、損害補償、農民に対する補償

(出典元:「朝日新聞の用語の手引き」朝日新聞出版)

「補償」は「補い(おぎない)償う(つぐなう)」という意味です。

新型コロナウイルスの感染拡大により、政府や自治体が事業主に対して一定の範囲で休業を要請し、多くの事業主がそれに応じました。

そうした事業主が労働者に賃金や休業手当(労働基準法26条)を支払うことを「休業補償」といっています。

国は雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成するために、雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)を拡充しました。

まとめ

今回のポイントをまとめます。

  • 「保証」は、間違いなく責任をもって引き受けること。
  • 「保障」は、地位や状態を守ること。
  • 「補償」は、損失を補い償うこと。

「保証」「保障」「補償」という言葉を聞く機会が多くなってきたように感じています。言葉の意味を正しく理解し、的確に使っていきたいものです。

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