「刺す」「挿す」「指す」「差す」「射す」の違い

「さす」と読む漢字に「刺す」「挿す」「指す」「差す」「射す」がありますが、これらにはどんな違いがあるのでしょうか。

今回は、省光社「正しい日本語の使い方」などを参考に調べてみました。

「刺す」「挿す」「指す」「差す」の違い

「刺す」

「刺す」は、先のとがった細いものでつく意味を持ち、「人を刺す」「布を刺す」「本塁で刺される」「とげが刺さる」などと使います。「刺」を使った熟語には「刺殺」「刺繍」などがあります。

「挿す」

「挿す」は、物の間に物をさしこむ意味を持ち、「髪にかんざしを挿す」「花を挿す」などと使います。「挿」を使った熟語には「挿入」「挿話」などがあります。

「指す」

「指す」は、指でその方向を明らかにする意味を持ち、「目的地を指して進む」「名指しする」「指し示す」などと使います。「指」を使った熟語には「指示」「指針」などがあります。

「差す」

「差す」は「刺す」「挿す」「指す」以外の「さす」を書くときに使われます。「腰に刀を差す」「かさを差す」「差しつ差されつ」「行司の差し違え」「抜き差しならぬ」「差し支え」「差し出す」などと使われます。

(以上参照:省光社「正しい日本語の使い方」)

「差す」と「射す」

「差す」とは

「差」という漢字を三省堂「全訳漢辞海」で調べてみると、

「差」には「えらぶ」「指名する」という語義があって、和語の「さす」と重なる部分があったことから「さす」「さし」の表記に広く用いられるようになった。

ということが書かれてありました。

さらに、「差す」を「岩波国語辞典」で引いてみると、

さす【差す・▵射す】①光が照り込む。光が当たる。「日がー」

とありました。

補足▼

「▵」は「射す(さす)」という読みが常用漢字表にはないことを示しています。

 

「差す」には「日が差す」という使い方があるということと、同じ意味で「日が射す」とも書くということが分かります。

「射す」とは

「射」という漢字を三省堂「全訳漢辞海」で引いてみると、

「射」には

③光線でじかに照らす

という意味がありました。

岩波国語辞典の「①光が照り込む。光が当たる。」と比べると、やや強い意味合いを感じます。

まとめ

「刺す」「挿す」「指す」「差す」の違いは分かりました。

「差す」と「射す」は同じ意味を持ちますが、どちらの漢字を使うかによって少しニュアンスが違ってくるように感じます。

ある本で次の二つの表現に出会いました。

「夕日が差し込んでくる」

「夕日が射し込んでいる」

比べて見ると、「夕日が射し込んでいる」の方がより鮮明に光線を描写しているように感じるのです。

「差し」と「射し」のどちらを使うかは、書き手の感じ方に委ねられているのでしょうか……。

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