「形(かた)」と「型(かた)」の意味の違いと使い分け
- 「髪の形」
- 「踊りの型」
この「形」と「型」という漢字はどう使い分ければよいのでしょうか?
まずは「形」と「型」の意味の違いを調べてみましょう。
目次
「形」と「型」の意味
明鏡国語辞典第二版に次のようにあります。
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「形」
①物の姿や格好。かたち。
「ドレスの形が崩れる」
「楔(くさび)形」
「ハート形」
「足形」
(表記)⇨型
②借金などの抵当。担保。
「借金の形にカメラをとる」
(表記)多くはかな書き。
※「⇨型」は「型を参照」という意味。
(出典元:「明鏡国語辞典第二版」大修館書店)
「型」
①一定の形を作るもととなるもの。鋳型・型紙など。
「石膏で型をとる」
②習慣となっている、決まった形式。しきたり。
③芸能・武道などで、規範となる動作・態勢。
「柔道の型」
④人や事物を分類するとき、その個々に共通する特徴として区別される形態・形式。タイプ。
「新しい型の車」
「血液型・新型」
(表記)一般には一定の枠にはまった形式をもつものの意では「型」、物のもっている姿・かたちの意では「形」と書き分けるが、はっきりとした一線は画しがたい。
「100メートル自由型(形)」
「能楽の型(形)」
「新しい型(形)の演劇」
など。
(出典元:「明鏡国語辞典第二版」大修館書店)
武道における「かた」ついて競技団体ではどちらを使っているのか確かめてみました。
講道館、全日本剣道連盟、全日本空手道連盟では「形」を使っているのに対して、国際空手道連盟極真会館では「型」を使っていました。詳細については調べていませんが、「かた」の捉え方によって「形」と「型」の選択が違ってくるのでしょうか?
辞書を調べてみると、岩波国語辞典では「踊りの型」、日本語大辞典(講談社)では「柔道の型」、旺文社国語辞典では「柔道の型」を用例に挙げています。
また新聞社では、「朝日新聞の用語の手引き」に「柔・剣・空手道の形」、「毎日新聞用語集」に「柔・剣道の形」とありました。
上記のことから明鏡国語辞典の見解、「形」と「型」の「はっきりとした一線は画しがたい」という意味を理解しました。
ところで、「旺文社国語辞典」に「使い分け」という枠囲みがありますが、そこに次のような記載がありました。
このことに関連して、漢字の成り立ちについて解説した記事がありましたので参考にさせていただきました。
「型」と「形」の成り立ち
「型」は「井(四角い枠)」と「リ(刀で削る)」でできた「刑」に「土」で、器物を作るために土で作った鋳型(いがた)を表します。
「形」は「井(四角い枠)」と「さんづくり=模様」が合わさってできた姿を表します
つまり、「型」に入れて作った同質の器物に模様をつけて個別の「形」になるということです。
(参考:日本漢字能力検定「どれだけ知ってる? 漢字の豆知識」)
「形」と「型」の使い分け
「形」と「型」の使い分けについて、「日本語に強くなる本(省光社)」が分かりやすいので、紹介します。
- 「形」=「袋形」「山形」「波形」のように複合語の場合が多い。
- 「型」=「新しい型の車」「踊りの型」のように単独で使う場合が多い。
- しかし、「形」を単独で「かた」と読む「髪の形が崩れる」などもある。
では、「形」と「型」をどう使い分ければよいのでしょう。
「形」は、目に見える物の姿としてのフォームを表しています。
音読みで「円形(えんけい)」「正方形(せいほうけい)」「三角形(さんかくけい)」、訓読みで「袋形(ふくろがた)」「山形(やまがた)」「波形(なみがた)」と使うには、「円」「正方」「三角」「袋」「山」「波」といった目に見えるフォームがあるからです。
これに対して「型」は、物のフォームを作り上げる元としてのタイプを表しています。
音読みで「原型(げんけい)」「母型(ぼけい)」「類型(るいけい)」「典型(てんけい)」「模型(もけい)」「紙型(しけい)」と使うのは、これらが一つのタイプだからなのです。
同じように、訓読みで「大型車(おおがたしゃ)」「血液型(けつえきがた)」と使うのもこれら元になるタイプに基づいているのです。
同じ「造けい」でも、「造けい美術」はフォームを造るから「造形美術」で、プラスチックの「造けい機」はタイプを造るから「造型機」になります。
(参考:「日本語に強くなる本」省光社)
「形」と「型」の用例
「形」の用例
「ドレスの形が崩れる」「楔(くさび)形」「ハート形」「足形」「借金の形にカメラをとる」「三日月形」「形ばかりのあいさつ」「あと形」「洋服の形」「花形」「跡形もない」「女形」「形なし」「形見」「自由形」「手形」「波形」「ひし形」「柔道の形」「足形」=踏んで残る足の形、「髪形」=一般に髪のかたちを指す、「歯形」=歯でかんだ跡
「型」の用例
「鋳型」「型紙」「石膏で型をとる」「新しい型の車」「血液型」「新型」「鍵の型を取る」「型染め」「踊りの型」「型にはまる」「型を破る」「型のごとく」「古い型の人間」「大型の台風」「型式」「○年型の自動車」「木型」「ひな型」「縦型」「横型」「芝居の型」「うるさ型」「大型車」「小型車」「大型店」「大型予算」「型どおり」「型破り」「型枠」「紋切り型」「足型」=靴や足袋の型、「髪型」=高島田など、「歯型」=入れ歯などをつくるためにとる歯の型
以上出典元:「明鏡国語辞典(大修館書店)」、「岩波国語辞典」、「日本語大辞典(講談社)」、「旺文社国語辞典」、「NHK放送のことばハンドブック」「NHK放送文化研究所」
まとめ
「形」
- 目に見える物の姿としてのフォームを表している。
- 「袋形」「山形」「波形」のように複合語の場合が多い。
「型」
- 物のフォームを作り上げる元としてのタイプを表している。
- 「新しい型の車」「踊りの型」のように単独で使う場合が多い。
※「形」と「型」は、はっきりとした一線は画しがたい。
「形」と「型」には使い分けについて、→「形」と「型」の使い分けについては、
間違いを教えてくださり、ありがとうございました。
訂正いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。