慣用読みとは? 「貼付」「早急」「出生」「重複」「固執」

「貼付」と書いて何と読むかご存知ですか?

私は「てんぷ」と読んでいたのですが、本来は「ちょうふ」と読むのだそうです。

このことを知ったきっかけは、ある提出書類の注意事項にありました。

注意事項に、

「通帳またはキャッシュカードの写しを添付してください」

とあったのです。

そのとき、「あれっ、添付って貼り付けることだっけ……?」と「添付」と「貼付」を混同してしまったのです。

冷静に考えれば「添付」は漢字の意味からして「添え付ける」ことなのですが、同じ読みで「貼り付ける」という意味の「貼付」が頭を混乱させてしまったのです。

そこですぐに辞書を引いてみました。

「添付」と「貼付」の意味

「添付」とは

てんぷ【添付】

書類などに、その補足となるものを付け加えること。

「確定申告書に領収書を添付する」

「電子メールに写真を添付する」

「パソコンの添付品」

(出典元:「明鏡国語辞典」大修館書店)

「貼付」とは

てんぷ【貼付】

「ちょうふ(貼付)」の慣用読み

(出典元:「明鏡国語辞典」大修館書店)

何と「貼付」は本来は「ちょうふ」と読み、「てんぷ」慣用読みだったのです。

目から鱗でした。

念のため、「ちょうふ」で引いてみましたが、やはり、

ちょうふ【貼付(貼附)】

はりつけること。

「証明書に写真を貼付する」

▽慣用読みで「てんぷ」とも。

(出典元:「明鏡国語辞典」大修館書店)

とありました。

慣用読みとは

では「慣用読み」とはどのようなものなのでしょうか?

日本語大辞典(講談社)には次のように書かれています。

かんようよみ【慣用読み】

本来は正しい読み方ではないが、広く一般でもちいられるようになったため、完全な誤りとはいえなくなっている読み方。「借問(しゃもん)」を「しゃくもん」と読む類。

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

つまり、「貼付」は、本来は「ちょうふ」と読むけれども「てんぷ」と読んでも間違いとはいえなくなっているということです。

では、どうして「貼付(ちょうふ)」を「貼付(てんぷ)」と読むようになったのでしょう?

漢検の「どれだけ知ってる? 漢字の豆知識」には、

「貼」の音は「チョウ」が正しいが、「店」「点」など同じ「占」を含む漢字が「テン」と読むためか、「添付」と意味が近いので混同したか、「てんぷ」と読む人が増え、“慣用読み”として認められつつある。

(出典元:漢検「どれだけ知ってる? 漢字の豆知識」)

とあります。

私と同じように「添付」と「貼付」を混同してしまった人がいたということです。

辞書を引いてみると、ほかにも次のような慣用読みがありました。

漢字 本来の読み 慣用読み
依存 いそん いぞん
寄贈 きそう きぞう
矜持 きょうじ きんじ
固執 こしゅう こしつ
早急 さっきゅう そうきゅう
出生 しゅっしょう しゅっせい
重複 ちょうふく じゅうふく

 

「早急」「出生」「重複」「固執」の読みについて

「早急」の読みについて「日本語に強くなる本」に次のように記載されています。

「早急」は「さっきゅう」か「そうきゅう」か

「常用漢字音訓表」にも「早」の音に「ソウ」、一字下げて「サッ」を掲げている。

「サッ」の例欄には、「早速」「早急」が載せてあり、「さっきゅう」が標準的な読み方であることを示している。

(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)

常用漢字表の本表を見ると確かにそのことが分かります。

漢字 音訓 備考
ソウ

 サッ

はやい

はやまる

はやめる

早朝、早晩、早々に

早速、早急

早い、早口、素早い

早まる

早める

早乙女(そおとめ)

早苗(さなえ)

⇔速い

⇔速まる

⇔速める

[出典元:文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]

さらに、「日本語に強くなる本」には、

「常用漢字表」の見方および使い方の10に「他の字又は語と結びつく場合に音韻上の変化を起こす次のような類は、音訓欄又は備考欄に示しておいたが、すべての例を尽くしている訳ではない」として、「納得(ナットク)その他の例を挙げてある。歴史的仮名遣いでは「ナフトク」であり、これが音韻上の変化を起こして「ナットク」となったと考えられる。

同じように「早急(サフキュウ)→サッキュウ」と読むのは根拠のあることなのである。

(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)

とあります。

このことについて、現在の常用漢字表では見方および使い方の11に、

他の字又は語と結びつく場合に音韻上の変化を起こす次のような類は、音訓欄又は備考欄に示しておいたが、すべての例を尽くしている訳ではない。

納得(ナットク) 格子(コウシ)

手綱(タヅナ)  金物(カナモノ)

音頭(オンド)  夫婦(フウフ)

順応(ジュンノウ) 因縁(インネン)

春雨(ハルサメ)

[出典元:文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]

とあります。

「出生」の伝統的な読み方は「しゅっしょう」で、戸籍関係では「しゅっしょう」が使われていますが、今日一般では「しゅっせい」と発音し、「出生地(しゅっせいち)」「出生届(しゅっせいとどけ)」とする傾向が見られます。

「重複」も伝統的な言い方は「ちょうふく」ですが、「じゅうふく」も誤りとはいえません。

固執(こしつ)」は「固執(こしゅう)」の慣用読みですが、今日では「こしつ」が一般的です。

なお、「NHK 放送のことばハンドブック 日本放送協会 編」には、

早急に ○サッキューニ ×ソーキューニ

重複  ○チョーフク ×ジューフク

×:放送では採らないという意味で、必ずしも誤りとはいえないものもある。

出典元:「NHK 放送のことばハンドブック 日本放送協会 編(日本放送出版協会)」

と記載されています。

 

まとめ

慣用読みとは

  • 本来は正しい読み方ではないが、広く一般でもちいられるようになったため、完全な誤りとはいえなくなっている読み方。
  • 貼付(ちょうふ/てんぷ) 早急(さっきゅう/そうきゅう) 出生(しゅっしょう/しゅっせい) 重複(ちょうふく/じゅうふく)など。

言葉には時代によって使い方や意味が変わっていくものがあります。漢字の読みでも慣用読みとされていたものが一般的になることがあるので、状況に適した漢字の読みができるようにしたいものです。

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