「柔らかい」と「軟らかい」の意味の違いと使い分け

「御飯がやわらかい」の「やわらかい」を漢字で書く場合、

  • 御飯が柔らかい
  • 御飯が軟らかい

 

のどちらが正しいのでしょうか?

「柔」と「軟」の意味の違い

「柔」と「軟」の意味を明鏡国語辞典で調べてみると、

「柔」…やわらかいこと。しなやかなこと。

「軟」…やわらかい。おだやか。

(出典元:「明鏡国語辞典」大修館書店)

と、きわめて近い意味をもっていました。

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「柔らかい」と「軟らかい」の意味の違い

日本語大辞典で「やわらかい」を引いてみると、見出し語を【柔らかい】と【軟らかい】の二つに分けて解説していました。

それによると、

「柔らかい」の意味

「柔らかい」の意味は四つあります。

①手触りがふんわりしている。

「柔らかい布団」

②しなやかである。

「柔らかい身のこなし」

③穏やかだ。なごやかだ。

「人当たりが柔らかい」

「柔らかな日差し」

④考え方などに融通性がある。

「頭の柔らかい人」

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

「軟らかい」の意味

「軟らかい」の意味は二つあります。

①物が、わずかな力で形などが変わる状態である。

「軟らかい土」

「豆を軟らかく煮る」

②かたくるしくない。

「軟らかい話」

「態度が軟らかい」

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

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「広辞苑」では「柔」と「軟」の使い分けについて、次のように解説しています。

◇「柔」は「剛」の、また、「軟」は「硬」の、それぞれの対語の意味で使われることが多い。「柔」は、力を加えて変形しても元に戻る場合、「軟」は、力を加えると変形しやすく元に戻らない場合にによく使う。

(出典元:「広辞苑第五版」岩波書店)

「柔らかい布団は」ふんわりとしていて手で押しても元に戻りますが、「軟らかく煮た豆」はわずかな力で形が変わり元には戻りません。このように「柔らかい」は元に戻り「軟らかい」は元に戻らないということなのです。つまり冒頭の「御飯」はわずかな力で形が変わり元には戻らないやわらかさなので、「軟らかい」になります。

「柔らかい」と「軟らかい」の用例

次に「明解国語辞典」と「朝日新聞の用語の手引き」を参考にして、用例を分類したいと思います。(茶が「明解国語辞典」青が「朝日新聞の用語の手引き」

(出典元:「明鏡国語辞典」大修館書店、「朝日新聞の用語の手引き」朝日新聞出版)

「柔らかい」の用例

①手触りがふんわりしている。

  • 「柔らかい布団」
  • 「つきたての餅は柔らかい」
  • 「赤ちゃんの頬は柔らかい」
  • 「柔らかい布団」
  • 「この服地は手触りが柔らかい」
  • 「テンの毛は柔らかい」
  • 「柔らかな手触り」
  • 「柔らかい布地」

②しなやかである。

  • 「柔らかい身のこなし」
  • 「枝が柔らかくしなう」
  • 「体・筋肉・手首が柔らかい」
  • 「身のこなしが柔らかい」
  • 「果実・茎・葉・実・芽が柔らかい」
  • 「身体が柔らかだ」
  • 「柔らかな皮」

③穏やかだ。なごやかだ。

  • 「人当たりが柔らかい」
  • 「柔らかな日差し」
  • 「春の日差しが柔らかい」
  • 「オーボエが柔らかい音色を響かせる」
  • 「(物腰・人当たり・まなざし)が柔らかい」
  • 「柔らかい日差し」
  • 「もの柔らかな話しぶり」
  • 「柔らかに事を運ぶ」

④考え方などに融通性がある。

  • 「頭の柔らかい人」
  • 「柔らかな頭」
  • 「柔らかな発想」
  • 「柔らかな心」

「軟らかい」の用例

①物が、わずかな力で形などが変わる状態である。

  • 「軟らかい土」
  • 「豆を軟らかく煮る」
  • 「この肉は歯ごたえが軟らかい」
  • 「僕の髪の毛は細くて軟らかい」
  • 「軟らかい地盤」
  • 「大根を軟らかく煮る」
  • 「ご飯が軟らかい」
  • 「土質が軟らかい」
  • 「軟らかい炭」
  • 「軟らかい材木」
  • 「大根を軟らかく煮る」

②かたくるしくない。

  • 「軟らかい話」
  • 「態度が軟らかい」
  • 「(文章・表現)が軟らかい」
  • 「研究書かと思ったら軟らかい本だった」
  • 「文章が軟らかい」

どちらを使ってもよい場合

文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)に「異字同訓」の漢字の用法が示されています。

これは、慣用上の使い分けの大体を示したもので、

やわらかい・やわらかだ

柔らかい・柔らかだ……柔らかい毛布。身のこなしが柔らかだ。物柔らかな態度。

軟らかい・軟らかだ……表情が軟(柔)らかい。軟(柔)らかい話。軟(柔)らかな土。

〔出典元:文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)〕

とあり、「柔らかい」と「軟らかい」のどちらを使ってもよい場合があることが分かります。

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また、旺文社国語辞典に独自に設けられている「使い分け」の項目では、

―――しかし「柔らかい」と「軟らかい」の区別は難しく、一般に「柔」または仮名書きを使う方が無難であろう。

(出典元:旺文社国語辞典第九版)

と、どちらか判断できないときには、「柔」か「仮名書き」にした方がよいとしています。

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まとめ

「日本語大辞典」に記載されていた意味をまとめて、

  • 「柔らかい」…ふんわり、しなやか、おだやかで融通性がある。
  • 「軟らかい」…わずかな力で形が変わり、かたくるしくない。

としてみましたが、いかがでしょうか?

「柔らかい」と「軟らかい」の使い分けに厳密なルールはありませんが、新聞社の用語集などには明確な記載があります。参考にしてみてください。

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