百年文庫13「響」ヴァーグナー、ホフマン、ダウスン

「ベートーヴェンまいり」ヴァーグナー 高木卓 訳

大作曲家ヴァーグナーが小説を書いていたことが驚きでした。しかも、音楽家として影響を受けたべートーヴェンのことを書いているとは。

年表上でこの二人の関係をみると、ベートーヴェンが1770年~1827年でヴァーグナーが1813年~1883年。ベートーヴェンが亡くなったときヴァーグナーは14歳ですから、ベートーヴェンの交響曲に感動して音楽家になろうとしたころと重なります。

作中のベートーヴェンとの対話は創作ですが、そこで合唱つきシンフォニーのことが話題になっています。もちろんそれは「第九」のことです。「人間の声と楽器の統合・統合の基礎となる詩」などと、ベートーヴェンに語らせているところが見事です。

この「ベートーヴェンまいり」は1840年に発表され、高木卓の翻訳で1943年に出版されています。江戸時代末期に書かれたドイツ語の文章を訳者の翻訳によって読むことができることに感謝いたします。

「クレスペル顧問官」ホフマン 池内 紀 訳

歌姫アントニエの歌声を作者は次のように表現しています。

「ときには沁み入るようにやさしく、またときにはうぐいすの咽喉のように微妙なふるえをおびて、高くまた低く流れてくることもあります……」

ところが、クレスペル顧問官は決してアントニエに歌を歌わせませんでした。それは何故でしょう?

そこに秘められた展開に唸らせられます。音楽家でもある作者ならではの物語です。
 

「エゴイストの回想」ダウスン 南條竹則 訳

浮浪児のアントンは、バイオリンの才能をある女性に見出され演奏家として大成します。しかし、今の彼があるのは、本当はニネットという少女のおかげだったのです。外から聞こえる手回しオルガンの音を聞いてアントンは、ニネットと過ごした日々を思い出します。

アントンはニネットと再会することができるのでしょうか……? 

「私は君を腕に抱いて、雷に打たれたい、おお、ストラディヴァリウス、わが恋人よ……」

この言葉が、この物語の終末を印象付けているように思います。

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