百年文庫20「掟」戸川幸夫 ジャック・ロンドン バルザック
「爪王」戸川幸夫
「吹雪」は神室連峰の崖の中腹にあるブナの上で生まれました。神室山は山形・秋田両県にまたがり私の居住地からも見える山なので、それだけで読書意欲が湧いてきました。
巣立ち後、主寝坂峠の丸の森に住み着いた吹雪は、真室川の老鷹匠に捕らえられ名鷹に育てられました。そしてある日、鷹匠に安楽城村から鶏や家鴨を襲う大きな赤狐退治の依頼が入ったのです……。
映像などでは表現し切れない大自然の営みが臨場感をもって描写されており、想像力を掻き立てられます。赤狐との死闘場面はまさに「爪王」を印象付けるものでした。
1955年(昭和30年)の作品。
動物文学を確立させた作家であること、椋鳩十と並ぶ第一人者であることを知りました。「熊鷹 青空の美しき狩人(藤原審爾1982)」と読み比べてみるのもおもしろいと思います。
「焚火」ジャック・ロンドン 瀧川元男 訳
1902年の作品。
男は、零下50度を超えるアラスカの地を仲間のキャンプを目指して進んでいました。
エスキモー犬を従えているものの、この厳寒の中を一人で移動するのは無謀なことでした。
両手の感覚を失いつつ焚火を焚こうとしますが最後の焚火も消えてしまいます。
男の最期を見届けた後のエスキモー犬の行動に自然の「掟」を見ました。
冒険家でもない限り決して体験することのできない零下50度の世界を読書によって追体験したように思いました。
「海辺の悲劇」バルザック 水野亮 訳
1835年の作品。
ブルターニュを訪れた若い男女が入江の岩山で「誓いを立てた人」と呼ばれている男を見かけます。男は化石のように動かずにじっと中海を見ていました。なぜ男はそこへ行くようになったのでしょう? 悲しみか、悔悟か、犯罪か……。その真実を知った彼らからは平静が失われていくのでした。
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