百年文庫26「窓」遠藤周作 ピランデルロ 神西清

「シラノ・ド・ベルジュラック」遠藤周作

フランスに留学していた「私」が出会った文学者の話。

ウイ先生は、「文学は人間の真実を追求することでは?」という私の問いに対して、「そんなものは宗教がやってくれる。文学はまず言葉です」と答えました。

そしてその後、先生は、顔を涙で濡らし昨夜自分の妻が自殺したことを伝えるのでした。

粉雪のラストシーンに物語の余韻が残ります。

「よその家のあかり」ピランデルロ

今回のアンソロジーのテーマ「窓」にぴったりの作品です。

孤独な男が暗い小さな部屋の中にいます。その部屋には一つだけ小さな窓がありました。ある夜その窓を通して灯りが入ってきました。それは隣の建物の四階に住む家族の灯りでした。男はその家族の光景を見て涙を流しました。

そしてその後、この物語は思わぬ展開を遂げていくのです。

「訪問」ピランデルロ

この訪問者の名はヴァイル夫人といいました。ヴァイル夫人は昨日死んだと新聞の記事にありました。その夫人が今、「私」に思い起こしてほしいと窓に背を向けた長椅子に座っています。私は三年前の白いモスリンの夏服をはだけた胸を思い出し、彼女の声を聞きました。しかし、最後に私が見たものは、長椅子の上の〇〇だけだったのです。

「恢復期」神西清

熱海で静養を続けていた少女が父の用意した軽井沢の別荘へと移ります。その温泉町と高原を比較した表現がいいのです。「色彩が息づいていた」「何という透明な感じだろう」「海の雲には線がなくて色彩だけである」「山の雲は先ず何よりも先に線で描かれなければならぬ」等々。病気が恢復していくにしたがって、見え方も感じ方も変わっていく少女の心情が感じられました。

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