百年文庫30「影」ロレンス 内田百閒 永井龍男

「菊の香り」ロレンス 河野一郎 訳

家路に散っていく炭鉱労働者たちの影。夕食の準備が整い父親の帰りを待つ母親と姉弟がいます。男の子は影の中にかくれ、女の子は暖炉の炎に照らされています。身ごもっている母親は、男の子がむしり取った菊の花をエプロンにさしました。母親が持ったランプの淡い影が床の上を漂い流れます。父親はまだ帰りません。
そして、この家族に哀しみが襲いました。終末の「目先の主人である生」と「究極の主人である死」という表現がしばらく耳に残りました。

「とおぼえ」内田百閒

考えてみると、最近では犬の遠吠えなどさっぱり聞かなくなったような気がします。(近頃の犬は皆家の中で飼われているからでしょうか。)

主人公は病気の友達を見舞ったあと、薄暗い道の突き当たりにある氷屋に入りました。もうすでに市電もなくなっている時間です。妻を亡くしたばかりの氷屋のおやじが人魂を見たと言っています。そこに夫を亡くしたばかりの女が焼酎を買いにやってきました。犬の遠吠えが聞こえます。気が付くと主人公は墓地の道を歩いていた、という夢と現実の間にいるような物語でした。

「冬の日」永井龍男

主人公「登利」は、娘が遺した孫娘と娘婿を家に呼び寄せ一緒に暮らしていました。二年後、娘婿は孫娘を連れて再婚し、登利は家を彼らに明け渡して弟の所に行くことになりました。
彼女が孫娘と別れる決心をしたのは何故でしょう? 「佐伯とお袋の関係を嗅ぎつけたら……」など、その理由を推察したくなる表現がいくつかあります。家を明け渡すために畳を張替え、独り年を越す登利の姿に深い情念を感じました。
作者は「短篇の名手」として知られています。

(030)影 (百年文庫)

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