百年文庫46「宵」樋口一葉 国木田独歩 森 鴎外
「十三夜」樋口一葉
お関は、原田という家格の違う家に嫁ぎましたが、夫の冷たい仕打ちに我慢できずに子供を残して実家に帰ってきました。
事の詳細が、お関と父母との会話から分かってきます。
父も母もお関に同情しましたが、父は熟慮の末原田家へ戻るように言い含めました。
原田家へ戻ることを決め車に乗ったお関は、その車夫が子供の頃から慕っていた煙草屋の録之助であると知ります。
録之助は、お関が嫁入りすることを知り放蕩するようになり、その後ついに身を破滅し車夫となっていたのでした。
「憂きはお互いの世におもう事多し」
文語体の文章がじんわりとしみ込んできます。
「置土産」国木田独歩
油の小売りをしている吉次は、軍夫になって彼地に渡って大稼ぎして、それを資本に店を出したいと考えていました。
吉次がよく行く茶店に、そこで働くお絹とお常という娘がいました。
彼地に向かう前、吉次はお絹とお常への置き土産として櫛を買い求め、八幡宮の賽銭箱の上に置きました。
それからしばらくたって、茶屋に吉次が彼地で病死したという知らせが入りました。
吉次はお絹に百円を渡して欲しいと遺言を残していました。
物語の最後の最後に吉次の思いが明らかになる展開です。お絹の行いに心情が察せられます。
「うたかたの記」森 鴎外
ミュンヘンの美術学校で学ぶことになった巨勢(こせ)が、カフェでマリイという少女(おとめ)と出会います。
マリイが自分の身の上を語るうちに彼女は巨勢が6年前にマルクを置き与えたすみれ売りの女の子であることが分かりました。
二人はマリイが暮らしていたスタルンべルヒの湖水を訪ね、物語はそこでクライマックスを迎えます。
ドイツという異国の情景を文語体で読むのも趣があってよいと感じました。
※(三篇とも文語体ですが、総ルビなので比較的読みやすいと思います。)
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