百年文庫47「群」オーウェル 武田麟太郎 モーム
「象を射つ」オーウェル 高畠文夫 訳
オーウェルが警察官として過ごしたビルマでの経験を書いたエッセイ。
「さかり」がついた飼い象が暴れて逃げ出しました。護身用に準備したライフルを持って像を探している「わたし」の後を何人かの住民がついてきます。「わたし」が象を撃つものと思っているのです。
一人のイギリス人の後に二千人もの群衆がついてくる光景が映像として見えてきます。
最後に像が打たれる場面の描写には文章ならではのリアリティがあります。
「日本三文オペラ」武田麟太郎
広告軽気球が繋がれている三階建てのアパートがこの物語の舞台です。
主な登場人物は、このアパートの主人、三階の八号室に住む映画説明者、一号室の爺さんと婆さん、四号室のカフェーの女給と情夫、二階の七号室のコックの男、等々。それぞれのエピソードを織り込みながら物語が展開していきます。
ラストシーンは、主人が広告軽気球を下ろす場面です。大騒動の末、物語は静かに幕を下ろします。
「マッキントッシュ」モーム 河野一郎 訳
舞台はサモア諸島のタルア島。この島を治める行政官ウォーカーとその助手マッキントッシュの物語です。
几帳面なマッキントッシュからすると、ウォーカーはがさつで下品で肉欲に憑かれた老人に見えました。しかし、「鉄の鞭をもって先住民たちを支配し、いっさい抗うことを許さなかったが、そうかといって、島にいる白人たちが彼らの虚につけこむことは、絶対に容赦しなかった」とあるように、ウォーカーは先住民を我が子のように思っていました。ところが、そんなウォーカーに反感を持つ先住民たちが現れるのです。
読者の多くはマッキントッシュの側に立って読み進めるでしょう。だからこそ、予想もしなかった展開に驚くのです。最後の最後にウォーカーの真実の言葉を聞くことができます。
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