百年文庫57「城」ムシル A・フランス ゲーテ
「ポルトガルの女」ムシル 川村二郎 訳
カテネ家のケッテン殿の城は垂直な岩壁の上にそびえていましたが、四代に渡って続く戦いに明け暮れる彼がその城でくつろぐことはありませんでした。彼は、遠方の裕福な家から妻をめとるというケッテン家のしきたりにしたがって、ポルトガルの娘と結婚しましたが、結婚から11年経っても彼の戦いは続いていました。
ある日戦いが終局に向かう頃、城に向かっていたケッテンは一匹の蠅に刺されたことから発熱し、生死をさまよう闘病が続けました。彼にはもはや弓を引く力もありませんでした。しかし、彼は妻が連れてきたポルトガルの男との仲を疑いその男を殺そうと思うようになります。ケッテンは短剣を腰に岩壁を登り城の窓から部屋に入りました。その結末は……。
という話です。
決して平易な文章ではなく、読み取りに時間がかかりましたが、その分読み応えがあるとも言える物語でした。
「ユダヤの太守」A・フランス 内藤 濯 訳
舞台は古代ローマ。不倫により24歳のときに追放されたラミアは62歳になってローマに帰ることができました。そこで彼はユダヤの太守ポンティウスと30年ぶりに再会します。ラミアには身の上の不運、ポンティウスには統治者としての重荷がありました。物語は、当時を振り返る二人の会話で展開していきます。
作者 A・フランスは1921年にノーベル文学賞を受賞しています。
「ノヴェレ」ゲーテ 小牧健夫 訳
侯爵夫人は叔父のフリードリヒ侯と、難攻不落といわれた古城を見にいくことになりました。
絶壁を登りつめて眼下の全貌を見渡していたとき、町の市場が火事になっているのが見えました。市場には猛獣の見世物小屋があり、そこから逃げ出した虎が夫人の前に現れ、同行の家来によって仕留められます。もう一頭のライオンは捕獲されることになりますが、その危機を前に猛獣の飼い主たち親子三人の歌声が恐怖を調伏していきます。
比較的平易で読みやすい文章でした。
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