百年文庫58「顔」ディケンズ ボードレール メリメ

「追いつめられて」ディケンズ 小池 滋 訳

生命保険会社の総支配人だった「私(サンプソン)」が、当時出会った一人の人物を物語る形で進められる推理小説です。

物語は、ある日スリンクトンという男性がサンプソンの事務所を訪ねて来るところから始まります。

サンプソンは、スリンクトンに不信感を持ちながらも、その友人の生命保険手続きを完了します。

しかし、手続きの前にサンプソンの自宅にもう一人の人物が訪問していました。その人物は何者で何故そこに登場したのか気になるところです。そしてそこからが推理小説の醍醐味となります。

物語の後半では、一気にサンプソンの謎と彼に関わる人々の相関が明らかになります。その展開の仕掛けが実に見事でした。

ディケンズの作品は学生時代に「デイヴィット・コパーフィールド」を読んだことがあります。内容は忘れてしまいましたが、当時NHKの「若い広場~マイブック」という番組で紹介されていたのを見て読んだことを思い出しました。

「気前のよい賭け事師」ボードレール 内田善孝 訳

ある男が地下にある豪華な家に入りました。

彼は葡萄酒を飲み、賭け事に熱中し魂を失っていきました。

悪魔大王は魂を売り渡してしまった彼に自分の儲けをやりました。

それは倦怠から救ってくれる力でした。

彼は、この気前のよい賭け事師にお礼を言ったことでしょう。

しかし、彼の心にいつもの疑念が広がっていきます。
「ああ! 神様。主なる神様あ! 悪魔がちゃんと約束を守ってくれますように!」

信じがたい幸福を疑い発した言葉がおもしろい。

「イールのヴィーナス」メリメ 杉 捷夫 訳

イールで発掘された青銅のヴィーナスが惹き起こした恐怖の体験です。

ペイレオラード氏は6尺ほどもあるビーナスの立像を自分の家の庭に設置しました。

息子のアルフォンスは、結婚式の日、ポーム(テニスの先駆となったスポーツ)をするために、花嫁に渡すつもりでいたダイヤ入りの指輪をはずし、それをヴィーナスの薬指に通しておきました。ところが、アルフォンスはその指輪をそこに置き忘れてしまうのです。その夜、家に帰り花嫁と二人部屋にいるとき事件は起こりました。やがて、ヴィーナスの立像は教会の鐘に姿を変えました。この青銅を所有する者には悪運が付きまということのようです。

ヴィーナスの美しさと冷ややかさの描写が秀逸でした。

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