百年文庫59「客」吉田健一 牧野信一 小島信夫
「海坊主」吉田健一
ある文士が銀座の料理屋で一人の男と出会いました。男は背の高い大男でした。
文士はその大男と気持ちよく飲むことができ、彼の誘いに乗って数か所の店を飲み歩きました。
大男は実によく食べて飲みました。焼き鳥一本を丸ごと食べビフテキをお代わりしました。
最後に行ったのが隅田川の川っ縁の店。大男はその店の庭に降りて川に入りました。
何と大男は〇〇だったのです。
と、思わぬ展開を楽しむことができました。
「海坊主」は随筆集「乞食王子」の中の一篇です。
「天狗洞食客記」牧野信一
無口で感情を喪失している男に奇妙な癖が生じるようになりました。
男は天狗洞という道場の食客になることを勧められます。
天狗洞にはその師匠と美しい小間使が住んでいますが、小間使の美しさに見とれるようなことがあれば師匠はすぐに入門者を破門にします。三度の食事には必ず一本の徳利がついており、それを小間使が運んでくるものですから、たいていの食客たちは脱落していきました。ところが男はこの苦行とも言える関門を突破したのでした。そして……。という物語です。
話の設定が面白いのです。映画にすると良いと思います。主演は、是非、松重豊さんでお願いします。
「馬」小島信夫
「僕」が知らないうちに妻のトキ子が家造りを始めていました。主人である自分は蚊帳の外におかれ、トキ子の要望に従って職人たちは作業を進めていきます。「僕」は疑心暗鬼となり被害妄想を持ち病院に入院してしまいます。
二階建ての家の一階は馬の部屋になりました。トキ子がかわいがる馬に「僕」は嫉妬し増々妄想は深まっていきます。
物語は現実と妄想が絡み合いながらテンポよく進んで行きます。作者の発想が次々と文章になっていくようでした。
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