百年文庫61「俤」水上瀧太郎 ネルヴァル 鈴木三重吉

「山の手の子」水上瀧太郎

山の手の高台に建つ黒門のお屋敷の子がお屋敷を抜け出して、町の子たちと遊ぶようになりました。

お屋敷の子はその町の子の姉お鶴にかわいがられ、密かに恋心をもつようになります。しかし、お鶴は芸者の子として売られていくことになったのです。お屋敷の子は、「大人になったら偉い人になってお鶴の所へ遊びに行く」と誓います。

こうした思い出を二十歳になったお屋敷の子がしみじみと味わっているという物語です。

子どもの心に芽生えた恋の感情を如実に表現した作品と言えます。

「オクタヴィ」ネルヴァル 稲生 永 訳

「オクタヴィ」とは主人公がマルセイユで出会った若いイギリス娘のことです。彼女はナポリ行の船の上で、「もし私を愛しているなら明日ポルティチで待っていて欲しい」と言います。主人公は約束どおり、ポルティチで彼女と会うのですが、そこで主人公は自分が彼女を愛することができない理由(宿命の夜)を話して聞かせます。

この「宿命の夜」について、主人公は手紙形式で語っています。この手紙は後に彼女に宛てて書かれたものと思われますが、そのことは明確に示されていません。

それから時が過ぎ、主人公はナポリでオクタヴィと再会します。彼女は著名な画家と結婚していました。画家の身体は完全に麻痺しており、彼は残忍な嫉妬を鎮めることができないでいました。

宿命により愛することができなかった主人公の思いを幻想的に描いた作品か? と思いました。

「千鳥」鈴木三重吉

主人公の青年は、瀬戸内の小島で藤さんという若い女性に出会いますが、彼女は何か事情を抱えているようで、わずか二日で青年の前から姿を消してしまいます。彼女が去った後、青年の机の引き出しに紋羽二重が残されているのが見つかりました。その紋柄が「千鳥」なのです。青年は千鳥という物語を壊してしまわぬよう、彼女の事情も行き先も一切訊きませんでした。

青年の淡い恋心が瀬戸内の景色の中に描かれている作品です。

(061)俤 (百年文庫 61)

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