百年文庫76「壁」カミュ 安部公房 サヴィニオ

「ヨナ」カミュ 大久保敏彦 訳

ジルベール・ヨナは、友人のラトーと妻のルイズに支えられ画家として大成していきました。狭いアパルトマンにはいつも芸術家の友人や弟子たちが訪れていて、彼らがヨナの才能を押し上げました。それは真実でしたがヨナは自分の星しか信じませんでした。しかし、次第にヨナの絵は売れなくなり彼は孤独に苛まれます。彼は自らが作った屋根裏部屋にこもり絵を描こうとしました。彼のカンヴァスは白紙で中央に一語を書き残していました。それはsolitaire(孤独)ともsolitdaire(連帯)とも読めました。淡々とした一文一文が主人公の内面をリアルに表現しているように感じました。

「魔法のチョーク」安部公房

空腹の画家が赤いチョークで壁に食べ物の絵を描くと、それが本物になって壁から落ちて来るという展開。画家は息苦しさから窓を描きましたが、それは本物の窓にはなりませんでした。窓の外という実態がなかったからです。そこで画家は外の世界を作ることにしました。それは世界の想像でした。最期は画家が描いた全裸の女性にピストルで撃たれ、自らが壁の中の絵になってしまうという結末です。奇想天外な発想が面白かったです。

「『人生』という名の家」サヴィニオ 竹山博英 訳

朝、20歳になる男性が60歳の母親を残して小旅行に出かけました。蒸気船を降り湖畔から離れるように歩いて行った先に背の高い建物がありました。ここからが彼の不思議な体験の始まりです。家の中からバイオリンの音が聞こえてきて、それが同じ曲を何度も繰り返しています。揺り椅子が動いていたり飲みかけのミルクコーヒーが置かれていたりと人の気配がしますが、どの部屋に行っても人と会うことはありません。最上階の4階に着くと人のいない部屋にバイオリンが浮かんでいました。鏡を見ると男性は60歳の老人になっていました。出会うことのない人々のことを想像しながら母との暮らしを思い出しながら不思議な冒険が進み結末を迎えていました。

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