百年文庫78「贖」有島武郎 島崎藤村 ジッド

「骨」有島武郎

旧制中学を4年で退学させられ父親と不和になり家から吐き出された勃凸は、友達の下宿で「おんつぁん」と呼ばれる男性と出会い、父親のように慕うようになりました。良心を持たない奇怪な自由さで暮らし続ける勃凸でしたが、財布の中には亡くなった母親の骨を忍ばせてありました。しかしある時、彼はその大事な骨を無くしてしまうのです。それは奔放に生きる若者に秘められた心のよりどころでした。それでも勃凸はたくましく生きていくでしょう。そんな予感を抱かせる終末でした。

「藁草履」島崎藤村

海ノ口村の農夫、源吉は皆から「藁草履」と呼ばれていました。村は産馬地でよく競馬が行われていました。源吉はその日の競馬で最後の勝利を目指していましたが負けてしまいます。そして負けた怒りの矛先を妻のお隅へと向けてしまうのでした。お隅は源吉が振り回した天秤棒で足を骨折してしまいます。源吉は自分の過ちを償うこともできずにお隅を馬に乗せて医者の所へと向かいましたが、お隅は馬の背の上で息絶えてしまいました。自らが招いた過ちと赦せぬ過去が絡まって源吉の苦悩が続いていきました。

「放蕩息子の帰宅」ジッド 若林 真 訳

家出をして放蕩に疲れ切った息子が帰ってきました。彼は父に「…… 僕はもう、あなたの息子と呼ばれるだけの値打ちがありません。だけどせめてあなたの召使い、それも最低の召使いとして、家の片隅に住まわせて下さい」と謝罪します。そして、兄の叱責と母の愛撫を受けた後、家出するときにはまだ小さかった弟と対話しました。彼は弟が当時の自分と同じ心境にあり同じ道を歩もうとしていることを知ります。弟から見た兄は栄光に輝いていたのでした。自分探しの旅に出る若者の心情が伝わってきました。

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