百年文庫80「冥」メルヴィル トラークル H・ジェイムズ

「バイオリン弾き」メルヴィル  杉浦銀策 訳

ヘルムストーンは彼の詩が酷評された日にホートボーイという人物と知り合いました。彼はホートボーイのことを太っていて陽気で才能のない平凡な人物と感じました。しかし、ヘルムストーンはホートボーイのバイオリンを聴いて驚きました。彼は少年時代から天才と呼ばれたバイオリニストだったのです。今、彼を知る者はいません。生計のためにバイオリンを弾いて家々を渡り歩いています。ヘルムストーンは名声がなくてもバイオリンを弾くことに幸福を感じているホートボーイに深く感銘を受けました。純粋に幸福を感じることができる心を大切にしたいと思いました。

「夢の国」トラークル 中村朝子 訳

少年の頃、片田舎で過ごした8週間は、ぼくにとって特別な人生のようであり、若々しい幸福に満ちあふれていました。

階下には年とった叔父と病身の娘(マリア)が住んでいました。ぼくは赤い薔薇一輪をマリアの膝に置きました。それが繰り返され何千本もの薔薇が彼女の膝に置かれました。二人は沈黙の中で深い幸福を味わっていました。彼女の死後、ぼくはその町を訪れたことがありません。思い出の中にのみ生きているものを追い求めているのです。人には時折ふと思い出さずにいられない出来事があるようです。

「にぎやかな街角」H・ジェイムズ 大津栄一郎 訳

23歳でアメリカを離れ、33年ぶりにニューヨークに帰ってきた男性の物語。彼には街角に空き家となった大きな家があり、彼は毎夜ホテルからそこへ通っていました。ある夜、最上階の一室に何者かが居る気配がありました。彼はそれを自分の分身と感じ、その分身と会うべきかどうか葛藤を続けます。それはもう一つの人格を持った自分でした。最上階から逃げるように玄関にたどり着いたとき、彼は分身と出会い気を失ってしまいます。「もう一人の自分」。読み進むうちに知らず知らず自己の内面を意識してしまう作品でした。

(080)冥 (百年文庫 80)

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