百年文庫84「幽」ワイルド サキ ウォルポール

「カンタヴィルの幽霊」ワイルド 小野協一 訳

3世紀も前から幽霊が居ると言われてきたカンタヴィル屋敷にアメリカ公使のオースチン一家がやって来ました。オーシチン氏はこの屋敷に幽霊が出ることを承知で買い取ったのです。この家族は幽霊が出ても少しも怖がらず、その超常現象を合理的に解き明かしたため、幽霊はそのプライドをズタズタにされてしまいます。しかし、娘のヴァージニアだけはそんな幽霊の悲しみを理解できました。生きている人間と同じように人格をもち同じように会話をする幽霊の登場により、一般的な幽霊ばなしとは一線を画す物語になっています。映画やアニメにもなっている作品なのでご存知の方も多いのではないかと思います。童話「幸福の王子」もオスカー・ワイルドのなじみ深い作品です。

「ガブリエル・アーネスト」サキ 浅尾敦則 訳

ヴァン・チールは自分の領地の森で素っ裸の少年と出会いました。ヴァン・チールの「食べるものは?」という質問に少年は「小ウサギ、野ウサギ、野鳥、ニワトリ、子羊、人の子」と答えました。ヴァン・チールから「この森から出て行くように」と言われた少年は、次の日の朝、ヴァン・チールの家に現れました。その後、彼の森で野獣を見たという友人の話から、少年が狼男であることが判明しましたが、そのときすでに一人の子供が狼男の犠牲になっていました。分かりやすい簡潔な表現が読者の想像を駆り立てます。

「ラント夫人」ウォルポール 平井呈一 訳

「ラント夫人」とはロバート・ラントという小説家の妻で一年前に狭心症で亡くなっています。夫人は亡くなる間際に「きっと帰って来ます」と言い残したそうです。ロバートは初めて家を訪れた同じく小説家のランシマンにそのことを教えました。その日は夫人が亡くなってからちょうど1年たった日でした。ロバートはランシマンには見えない何者かに怯えていました。ロバートは「あいつは殺されてもしかたのない女」とほのめかした後「あいつ、出よった」「あいつを追っ払ってくれ」と叫び、ベッドの上で七転八倒して亡くなりました。ラント夫人が復讐のために帰ってきたことを匂わせる話の展開がおもしろかったです。

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