百年文庫45「地」ヴェルガ キロガ 武田泰淳
「羊飼イエーリ」ヴェルガ 河島英昭 訳
羊飼イエーリは孤独な少年時代を過ごしましたが、自分の力で生き抜き純朴な若者に成長しました。
彼には、幼い頃に共に過ごした友達がいました。一人は隣人の娘マーラ。もう一人は別荘生活をしていたドン・アルフォンソです。
彼はずっと好きだったマーラと結婚しますが、ドン・アルフォンソに寝取られてしまいます。
過酷な現実を辛抱強く生き抜いてきたイエーリなのに、そのラストシーンはあまりにも悲しいものでした。
「流されて」キロガ 田中志保子 訳
アメリカハブに噛まれた男が、タクル-パクでの治療を求めてパラナ川をカヌーで下る話です。
足はパンパンに腫れ、激痛が走りのどの渇きが続きましたが、やがてそれらはやわらいでいきました。
気分が良くなり毒は抜け始めたと思いました。
しかし、男は急に体が冷たくなったのに気づきます。
カヌーが流されていくときの男の意識が克明に描かれた作品です。
「動物」武田泰淳
動物園の子熊に指を噛まれた男の子の父親、南木氏。その動物園の創始者М氏の飼い犬に跳びつかれて怪我をした女の子の父親、西川氏。
南木氏は正人君子型西洋史学者でM氏に対して巧みに親密に接しました。西川氏は正直一点張り動物学者で怒りを爆発させました。
ある夜、大きくなった子熊が檻を破って脱出しました。折も折、四歳と一歳の二匹連れの熊が小学生を襲いました。
南木氏も山狩りに参加しましたが、屈強な猟師までが瀕死の重傷を負ってしまい、南木氏は憂鬱のとりこになってしまいます。
最後の南木の言葉がこの物語の全てを語っています。
![]() |
中古価格 |
(Visited 6 times, 1 visits today)