百年文庫64「劇」クライスト リラダン フーフ

「拾い子」クライスト 中田美喜 訳

アントーニオ・ピアーキイには年若の妻エルヴィーレと先妻の息子パオロがいました。

ピアーキイは息子を連れた商用の旅先で身寄りのない少年ニコロと出会った後にパオロを伝染病で亡くしてしまいます。

ピアーキイはニコロを家に連れ帰り、息子として育て自分の商売の後を継がせました。

妻エレヴィーレは裕福な染物屋に育ちました。13歳のときに火事に遭いジェノアの青年に助けられましたが、その青年は頭に怪我をしてエレヴィーレの看病を受けた後に死んでしまいました。

やがてニコロは成人し結婚しました。あるときニコロがエレヴィーレの部屋を覗くと、エレヴィーレが誰かの足元にひれ伏していました。その誰かとはジェノアの騎士の肖像画だったのです。ニコロはエレヴィーレの部屋に忍び込んでエレヴィーレを驚かせましたが、彼女はそれが元で死んでしまいました。

悪意は連鎖します。ニコロの悪意を知ったピアーキイはニコロを殺し、自らの絞首刑を望みました。

200年以上前に書かれた物語ですが、登場人物の心理描写が巧みで読み応えがありました。

「断頭台の秘密」リラダン 渡辺一夫 訳

死刑囚ド・ラ・ポンムレー医師のところへパリ医科大学外科病院のヴェルボー主席教授が面会に訪れ、死刑(断頭)執行後の個体の状態を観察させてほしいと依頼しました。実験方法は斬首後のポンムレーが「左の眼を大きく開けたまま、右の目瞼を三度続けて閉じる」こと。もしそれができたら不変の記憶力・意志を発揮して事実を証明したことになります。

明け方、断頭台の広場で死刑が執行されました。執行後ポンムレーの右眼は閉じられ左眼は見開かれたままでしたが、右目瞼は二度と上がることはありませんでした。

「断頭台の秘密」は1883年の作品です。

「歌手」フーフ 辻 瑆 訳

枢機卿マッツァモーリと礼拝堂楽長ドン・オラチオは、サン・カリストの牢獄で収監されている殺人犯コンロの歌声(テノール)に魅了され、彼を救い出しました。やがてその歌は教皇に気に入られ喝采を浴びるようになりました。コンロは自分の過去を知られるのを恐れ、マッツァモーリとオラチオをローマから遠ざけようと教皇に働きかけます。コンロはマッツァモーリの恋人オリンピアを連れ休暇の旅に出ました。オラチオはルッカの宮廷へマッツァモーリは日本の異教徒教化のための伝道使節の長に任ぜられました。

牢獄に響くテノールの歌声が聞こえてくるようです。オペラの一場面のようでした。

(064)劇 (百年文庫 64)

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