百年文庫67「花」森 茉莉 片山廣子 城 夏子
「薔薇くい姫」森 茉莉
作者自身を投影していると思われる主人公魔利(まりあ)の日常を描いた作品です。持病や自身の随筆・小説などについて取り留めなく話が続きますが、その中で魔利はいつも自分が子供のように扱われてしまうことに怒りを表します。「薔薇くい姫」はいつも何かに怒っているのでっす。鷗外と見られる父桜外やその家族とのエピソードなどが実に興味深い作品です。
「ばらの花五つ」片山廣子
晩年の随筆集「燈火節」に収録された作品の一篇です。
作者は、ばら園の主人が切ってくれた五つのバラの花を思い出し、「小さい利益と小さい損失を積みかさね、積みかさね、自分の新しい仕事を育ててゆかなければと、この頃しみじみと思うようになった。」と語っています。その年代でなければ語ることのできない深みのある言葉だと思います。
「つらつら椿」城 夏子
小田原から和歌山への転居など、子供の頃の思い出がありありと描かれていて、初めは随筆を読んでいるようでしたが、次第に物語の世界に誘われていったのだと感じました。父が初恋の相手おみわさんに書いた「河のへのつらつら椿つらつらに 見れどもあかず 熊野をとめは」という歌からとった表題。その語感に父への情愛を感じました。
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