百年文庫75「鏡」マンスフィールド 野溝七生子 ヘッセ
「見知らぬ人」マンスフィールド 浅尾敦則 訳
長期に渡り娘の住むヨーロッパに行っていた妻を迎えに港で船を待つ主人公。ところが船は港内で停泊したまま着岸しません。医者を乗せたボートが船に向かったりもしていますが、何があったか情報はありません。数時間後、船は動き出し、主人公は妻と再会しますが、妻とのやり取りに何かしっくりこないものを感じます。岸壁から見える船上の動きが後に明らかになる出来事を暗示していたことが分かり、読後なるほどと唸りました。
「ヌマ叔母さん」野溝七生子
ヌマ叔母さんは、鳰子(におこ)の父親の妹で鳰子とは12歳齢が離れています。ヌマ叔母さんは赤ん坊の鳰子の子守に行っていましたが、兄嫁の京子の意地悪により鳰子と会うことがなくなっていきました。鳰子が小学校3年生のときヌマ叔母さんが学校に会いに来て銀の万年筆を渡しますが、鳰子はそれを投げ返しました。母京子のヌマ叔母さんへの気持ちがそのまま鳰子に受け継がれていたのでした。戦争によって没落した軍人一家の虚栄の中で海外へ渡ったヌマ叔母さんの静かな佇まいが印象に残りました。
「アヤメ」ヘッセ 高橋健二 訳
次から次と咲いていく花々の美しさや豊かさを五感で感じ取っていた幼年時代が過ぎると、彼は長くて辛い回り道をたどり始めました。彼はがむしゃらに突進し有名な学者となりましたが、過ぎ去った年月に虚しさを覚え一人の女性を愛するようになります。彼女は彼に「私の名前を聞いて思い出せるものを見出して」と課題を与えます。彼女の名はイリス(青や黄のアヤメ)といいました。大人になる過程で次第に失ってしまう感覚について思いが巡りました。
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