「異常」と「異状」の意味の違いと正しい使い分け
職場の勤務日誌や巡回日誌などに「巡回結果」という欄があります。
決められた時間に決められた場所を巡回して、その結果を記入する欄です。
巡回の結果、「いじょう」がないとき、たいていの人は、
と書いていると思いますが、本当はどちらが正しいのでしょうか?
というわけで今回は、
「異常」と「異状」の意味の違いと正しい使い分け
についてお伝えします。
はじめに、辞書で「異常」と「異状」を引いてみました。
目次
「異常」と「異状」の意味
「異常」の意味
( 名 ・形動 ) [文] ナリ
いつもと違うこと。
普通と違っていること。
また、そのさま。
⇔ 正常
「 異常な事態」
「今年は異常に暑い」
(出典:「大辞林第三版」三省堂)
「異状」の意味
普通とは違った状態。
多く悪い状態に用いる。
「体に異状をきたす」
「全員異状なし」
(出典:「大辞林第三版」三省堂)
「異常」と「異状」の違い
「異常」とは
「異常」の「常」は「つねに」の「つね」で、「いつも」とか「ふだん」という意味を持っています。
ですから、「異常」は、「いつもと異なっている」ことです。
また、「異常」は、「正常」の反対語で、正常でない状態を示します。
つまり「アブノーマル」ということです。
「異常渇水」「異常乾燥」などと使います。
「異常」は形容動詞としても用いられ、「異常に緊張する」という使い方ができます。
「異状」とは
「異状」の「状」は、「状態」とか「現状」とかと使われているように、「ようす」という意味があります。
「異状」は「異なったようす」。
つまり、「異状」は、「異常な状態」という意味です。
「異状」は、特に安心できないような状態ののときに用いられます。
レマルクの小説「西部戦線異状なし」のように使います。
「異状」は普通の名詞なので、「異状に緊張する」という使い方はしません。
「異常」と「異状」の使い分け
「館内を巡回しましたが、いじょうはありませんでした」の場合は、
「異状なし」を用います。
これは、「巡回して館内を見てきたけど、異常な状態はなかった」ということです。
もしも、館内の窓が開いていて廊下に人の足跡が付いていたら、
異常な状態なので「異状あり」です。
医師が診断した結果、
その数値等が正常であれば「異常なし」です。
しかし、胃が痛いからといって、患者が「胃に異常があります」とは言いません。
「胃のあたりの状態が異なっている」、つまり
「胃のあたりが異状です」ということは言えます。
自動車の定期点検では、
点検項目の標準値から外れた状態が「異常あり」です。
一方、ドライバーが
エンジンの音やタイヤの状態などに違和感を感じたりするのは、「異状を感じる」になります。
「何かエンジンの音に異状を感じるんです」と整備士に診てもらったら、「エンジンの異常」が分かった、というような使い方になります。
医師の診断結果と自動車の定期点検の
「異状」を感じ、専門家にくわしく調べてもらったら「異常」が見つかった
という例は、
「異常」の前に「異状」がある
「異状」<「異常」
であること示しています。
「異常」と「異常」を使った例文
- 今日の彼女の行動は異常だった。
- 異常気象の原因は地球の温暖化にある。
- 精神の異常は認められないと診断された。
- 避難訓練で「全員異状ありません」と本部長に報告した。
- 最近、聞こえ方に異状が感じられる。
- 祭り会場の夜回りをしましたが、異状は見つかりませんでした。
- 自分では異状を感じなかったけれど、集団検診で異常が見つかった。
まとめ
「異常」と「異状」の意味の違いと正しい使い分けについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
今回のポイントをまとめます。
「異常」
- いつもと異なっていること
- 正常でない状態
「異状」
- 異なったようす
- 異常な状態
「異状」<「異常」
職場の勤務日誌や巡回日誌などの「巡回結果」という欄には
「異常」と「異状」は、自分で使ってみると、その使い分けに悩んでしまう言葉の一つです。
ニュースや新聞で見聞きする言葉ですので、気を付けて見ていてください。