「子供」「子ども」「こども」の表記、どの書き方がいいのか?
「子供」「子ども」「こども」
コドモという言葉を文字にするとき,あなたはどのように書いていますか?
基本的には「子供」「子ども」「こども」は,どの書き方をしても間違いではありませんが,この三つの書き方には,それぞれに意味があり,使い方が違っているようです。
今回は,「子供」「子ども」「こども」の表記,どの書き方がいいのか?についてお伝えします。
目次
「こども」の意味と語源
はじめに,岩波国語辞典第五版で「こども」を引いてみました。
こども【子供】
①幼い子。
②自分のもうけた子。
むすこ,むすめ。
子。
▽もと,「こ」に「ども」の付いたもので,子ら,多くの子の意。
(出典元:「岩波国語辞典第五版」)
(※黄色マーカーは筆者)
▽にあるとおり,コドモのドモの語源は,「者ども,油断するな」の「ども」と同じで,複数の意味を表す接尾辞です。
現在では,「コドモが一人います」とか「コドモたちが集まる」などと使われ,コドモには「子」の複数という意味がなくなっています。
「子供」という表記について
「子供」の「供」は当て字です。
しかし,『常用漢字表』の「供」の訓の例に「子供」と記載されてあります。
常用漢字表
本表
漢字 音訓 例 備考 供 キョウ 供給,提供,自供 ク 供物,供養 そなえる 供える,お供え ⇔備える とも 供,子供 [出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
(※黄色マーカーは筆者)
また,この常用漢字表の前書きに次の記載があります。
前 書 き
1 この表は,法令,公⽤⽂書,新聞,雑誌,放送など,⼀般の社会⽣活におい て,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すものである。
2 この表は,科学,技術,芸術その他の各種専⾨分野や個々⼈の表記にまで及ぼそうとするものではない。ただし,専⾨分野の語であっても,⼀般の社会⽣活と 密接に関連する語の表記については,この表を参考とすることが望ましい。
3 この表は,都道府県名に⽤いる漢字及びそれに準じる漢字を除き,固有名詞を 対象とするものではない。
4 この表は,過去の著作や⽂書における漢字使⽤を否定するものではない。
5 この表の運⽤に当たっては,個々の事情に応じて適切な考慮を加える余地のあるものである。
[出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
(※黄色マーカーは筆者)
この前書きに「子供」という表記を当てはめてみると,
- 「子供」という表記を目安(標準)として示しています。
- 「子供」という表記を各種専⾨分野や個々⼈の表記にまで行き渡らせようとするものではありません。
- しかし,専⾨分野でも,「子供」という表記が⼀般の社会⽣活と関連する場合には,この表を参考にしてください。
と読み取れます。
また,文部科学省用字用語例には「こども」の書き表し方として「子供」と記載されています。
見出し 表外漢字・表外音訓等 書き表し方 備 考 こども 子供 [出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
(※黄色マーカーは筆者)
そして,この文部科学省用字用語例の前書きには,
前書き
1 この「文部科学省用字用語例」は,文部科学省で公用文を作成する上での参考にするため,「常用漢字表」(平成22年11月30日内閣告示第2号),「公用文の漢字使用等について」(平成22年11月30日内閣訓令第1号)に基づき,一般に留意を要する用字用語の標準を示したものである。
3 この「文部科学省用字用語例」に示したもののほか,文部科学省の公用文における漢字の使い方は,「常用漢字表」に掲げられている。漢字に関しては,「公用文の漢字使用等について」の記の「1 漢字使用について」及び「3 その他」による。
なお,「書き表し方」の欄に示した各語句の書き方のほか,特別な漢字使用等を必要とする場合は,表外漢字を使用しても差し支えない(その語が読みにくいと思われるような場合は,振り仮名を付けるなど,適切な配慮をすること。)また,漢字書きで示した語についても,場合によっては,仮名書きにしても差し支えない。
[出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
(※黄色マーカーは筆者)
このことから,文部科学省では「子供」と漢字書きするのを標準とするけれども,場合によっては平仮名書きしてもよい,と読み取れます。
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いくつかの法令等を調べてみると,
- 平成22年度における子ども手当の支給に関する法律(厚生労働省)
- 子どもの読書活動の推進に関 する法律(文部科学省)
- 子ども・子育て支援法(厚生労働省)
- 幼保連携型認定こども園教育・保育要領(内閣府・文部科学省・厚生労働省)
- 子どもの貧困対策の推進に関する法律(内閣府)
と,「子ども」や「こども」の表記が使われていました。
「こども」という表記について
この仮名書きの「こども」は,よく見かける表記で,「こども園」「こども保育園」などと使われています。
国民の祝日に関する法律では,5月5日を「こどもの日」と定めて,「こどもの人格を重んじ,こどもの幸福をはかるとともに,母に感謝する」とその趣旨が記されてあります。
すべて仮名で「こども」と書かれているのは,小さい子供にも読めるようにとの配慮でしょうか。
なお,1950年『文部省刊行物基準』では,「こども」と仮名書きするのが標準とされていました。
「子ども」という表記について
「子ども」という表記は,上記の法令等でも使われていて,多くの場面で見られる表記です。
「子ども」と書く理由には,
- 「子供」の「供」はもともと当て字だから「子ども」と書く。
- 「子供」の「供」にはお供をする(従属する)という意味がありことから,「子供」という表記は大人の従者を連想させるから「子ども」と書く。
- 「子ども」の方が「子供」よりも柔らかいイメージがあるから「子ども」と書く。
など様々です。
一方,「子ども」という「漢字+平仮名」の表記は不自然だと感じている人もいるようです。
漢字と平仮名の「交ぜ書き」は,文脈にによっては読みにくいことから,「子ども」とは書かない,という人もいるようです。(例えば,「子どもも大人も絵本を読もう」)
まとめ
- 「子供」という表記は,常用漢字表で目安(標準)として示しています。
- 「子ども」という表記は,法令等でも使われていて,多くの場面で見られる表記です。
- 「こども」という表記は,「こどもの日」「こども園」「こども保育園」などと使われています。
「子供」「子ども」「こども」の表記は,使う人の立場や感じ方によって違ってくるようでした。
それぞれが所属する組織・団体・機関が示す「用字用語例」などの表記に従うことが大切です。
個々人の文章については,「子供」「子ども」「こども」の中から,それぞれの文脈に適した表記を選択するようにしてみてはいかがでしょうか。
だらだら長く書いているけど、ごちゃごちゃしてて結局何が言いたいのか分からない。
もっと分かりやすく書いて欲しいわ。あまりに支離滅裂すぎる。
アドバイスありがとうございました。
分かりやすい記事になるように努力いたします。
読解力の問題かと。
とても分かりやすい説明だと思います。ことばを大切にされていることがヒシヒシ伝わってきます。
3方向から思考され、確定的な使用法はなくて、場面や好みで使えばよいのではとのご提案と拝察します。
ちなみに、私は、子ども(達)が好きです。
コメントありがとうございました。
執筆の意図をご理解いただき、ありがたく思います。
まだまだ勉強不足ですが、がんばります。
『子ども』の表記について、
最近テレビ(NHK)や公的パンフレットでよく見る『子ども』の表記がどうしてもおかしく感じます。
子供やこどもの表記とするところを、半分を仮名混じりにする用法は最近まで公的にはなかったはずです。見かけるようになったのは子ども手当という頃からでしょうか。
供がお供・従者の字というのですが、
そもそも「ども」というのは、「つはものども」「おとこども」「おんなども」「私共」という複数の意に使われる昔っぽい言葉です。どもと濁れば普通は「共」を使い、お供ではありません。
供という字が当て字というのも、今では、「私共」「私供」と、両方を使うので、供の字は既に当て字では無いように思います。(どもの読みは常用漢字表外ではあるようです)
お供ではいけないというのも、その根拠は封建的だからというのでしょうが、これは謂れなき言葉狩りですし、日本ではなくGHQ残滓の思想です。
「ども」と仮名にするという意味には、何より供が読めない人(低学年や外国人?)へ書いているような、ついでに普通人も者ども一緒くたでいいというような意味が垣間見え、人を相当低く見るような発語者の姿勢の方が上記よりも問題がありそうです。
こんな風に日常語を仮名混じりに崩して公的機関で制度的に(公務員に強制して)使うようになっては、最終的に言葉がどんどん歪になり、日本語文化は少し危ういのではないかと危惧します。
コメントありがとうございました。
「コドモ」の表記について、本ブログでは、
・広くは「子供」も「子ども」も「こども」も認められている。
・公用文では「子供」が標準となっている。
と理解しています。
貴重なご意見、今後の参考にさせていただきます。