「共に」と「ともに」の意味の違いと使い分け 公用文では
「オリンピックの感動を皆様と共に分かち合いたいと思います」
「皆様に感謝申し上げるとともに、ますますのご健勝をお祈り申し上げます」
上の文の「共に」と「ともに」は同じ副詞で読み方も同じですが,平仮名と漢字で使い分けられています。
今回は,「共に」と「ともに」の意味の違いと使い分けについてお伝えします。
目次
とも(共)の意味
はじめに大辞林第三版で,「とも(共)」を引いてみました。
とも(共)
①主となるものと同一あるいは同類のものであること。
「スーツと-のベルト」
②名詞の上に付いて,
㋐主となるものと同一である,または同類であるなどの意を表す。
「 -糸」
「 -襟」
「 -切れ」
「 -柄」
「鮎あゆの-和」
㋑一緒に…する,互いに…し合う,などの意を表す。
「 -稼ぎ」
「 -食い」
「 -住み」
「 -倒れ」
「 -寝」
③複数のものを表す名詞の下に付いて,それらが全部同じ状態であることを表す。
「五人-合格」
「二人-猫好き」
④従となるものを表す名詞の下に付いて,それが主となる部分に含まれていることを表す。
「荷造り料-千円」
「通用期間は発売日-七日」
→ ともに(共)
(出典元:「大辞林第三版」三省堂)
さらに,「とともに(と共に)」を引いてみると,
とともに(と共に)
( 連語 )
①体言に付いて,「を伴って」「といっしょに」の意を表す。
「同志-歩む」
②文または文に相当する語句に付いて,「と同時に」の意を表す。
「雨が降りだす-,雷が鳴りだした」
(出典元:「大辞林第三版」三省堂)
「とも(共)」には,「同じ」「一緒」「同時」という意味があり,「ととも(共)に」には,「と一緒に」「と同時に」の意味がありました。
しかし,漢字で書くのか平仮名書くのかについては示していません。
そこで,「公用文における漢字使用等について」(平成22年11月30日内閣訓令)を見ると次のようにありました。
「共に」と「ともに」の使い分け
公用文における漢字使用等について
1 漢字使用について
(2)「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては,次の事項に留意する。
キ 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。
例 ある(その点に問題がある。)
いる(ここに関係者がいる。)
こと(許可しないことがある。)
できる(だれでも利用できる。)
とおり(次のとおりである。)
とき(事故のときは連絡する。)
ところ(現在のところ差し支えない。)
とも(説明するとともに意見を聞く。)
(以下省略)
[(出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
(※黄色マーカーは筆者)
この例「説明するとともに意見を聞く。」の「ともに」は「同時に」という意味です。
したがって,「同時に」という意味のときは,平仮名で「ともに」と書くこと分かりました。
さらに,文部科学省用字用語例には,次のように記載されています。
見出し 表外漢字・表外音訓表 書き表し方 備 考 とも 共 とも
共倒れ,共に(副詞),共々(副詞) …とともに,今後とも,両方とも
[(出典元:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
(※黄色マーカーは筆者)
この例から,次のことが分かりました。
- 漢字の「共」は,「共倒れ」「共に」「共々」のように「一緒に」という意味で使う。
- 平仮名の「とも」は,「…とともに」「今後とも」「両方とも」のように,「同時に」「全部同じ状態」という意味で使う。
「共」と「とも」の使い分け
また,「とも(共)」には,「共倒れ」のように名詞の上に付くものと,「両方とも」のように複数のものを表す名詞の下に付くものがありますが,文部科学省用字用語例には,「共倒れ」は漢字で,「両方とも」は平仮名で書かれています。
したがって,「親子ともに元気です」「家族5人とも」の「とも」は平仮名になります。
「共」「共に」と「とも」「ともに」の例文
これまで調べたことに基づいて,「共」「共に」と「とも」「ともに」の例文をまとめます。
「共」「共に」の例文
「共働き」
「共切れ」
「共稼ぎ」
「共食い」
「共住み」
「共倒れ」
「共寝」
「父と共に行く」
「同志共に歩む」
「友人と共に学ぶ」
「私も兄も共に健康だ」
「起居を共にした仲」
「とも」「ともに」の例文
「二人とも学生だった」
「男女とも若かった」
「五人とも合格」
「二人とも猫好き」
「雨が降りだすとともに,雷が鳴りだした」
「卒業するとともに結婚した」
「雪解けとともに草木が芽吹く」
(以上出典元:「大辞林第三版」「デジタル大辞泉」コトバンク)
まとめ
「共に」と「ともに」の意味の違いと使い分けについてお伝えしてきましたが,ご理解いただけましたか?
今回のポイントをまとめます。
- 「一緒に」という意味のときは,漢字で「共に」と書く。「友人と共に学ぶ」
- 名詞の上に付くときは,漢字で「共」と書く。「共稼ぎ」
- 「同時に」という意味のときは,平仮名で「ともに」と書く。「時代の流れとともに街並みも変わった」
- 複数のものを表す名詞の下に付くときは,平仮名で「とも」と書く。「二人とも」
読者の皆様へ
今回のテーマについて皆様と共に勉強できたことを嬉しく思っています。
当ブログのご利用に感謝するとともに,今後のご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。