「一つ、二つ、三つ…」と「1つ、2つ、3つ…」 漢数字と算用数字の使い分け 縦書きと横書き
「縦書き」と「横書き」
現在の日本語の文章には縦書きと横書きがありますが、元々は縦書きだけでした。
それは、日本語が漢字だけで記されていたためです。
漢字は縦書き専用だったのです。
その後、平仮名や片仮名が生まれますが、縦書きはそのまま使われ続けました。
そして、江戸時代以降、欧米からローマ字などが入ってきて、横書きも使われるようになりました。
このようにして、日本語と欧米の言語を組み合わせて使うようになり、しだいに横書きを使う機会が増えていったのです。
しかし、その後も縦書きが減るようなことはなく、現在でも、縦書きと横書きの両方が使われています。
このように、横書きが増えてきても縦書きがすたれなかったのは、縦書き専用だった漢字を今でも多く使っている点にあるのではないでしょうか。
漢数字と算用数字の使い方
さて、日本語の縦書きと横書きをしていく際に、漢数字と算用数字の使い分けをする必要が生じます。
「一つ、二つ、三つ…」と「1つ、2つ、3つ…」という数詞の使い方はどうあればよいのでしょうか?
「一つ、二つ、三つ」を縦書きにするのはいいのですが、「1つ、2つ、3つ」の縦書きにはなじめないとろがあります。
そこで、数詞の表記について調べてみると、文化庁のホームページに「公文書の在り方に関する成果物について(報告)(素案)」という文書がありました。
これは、現在、文化審議会国語分科会の国語課題小委員会で話し合われている「官公庁における文書作成」についての資料でした。
その中に、「数字の使い方」という項目があり、そこには次の記載がありました。
横書きでは算用数字を使う
例)令和2年11月26日 午後2時37分 72% 電話:03-5253-****
縦書き(官報、質問主意書等)では漢数字を使う
例)令和二年十一月二十六日 午後二時三十七分 七十二パーセント
電話:〇三-五二五三-****
これによると、横書きでは算用数字を用いた「1つ、2つ、3つ…」を使い、縦書きでは、漢数字を用いた「一つ、二つ、三つ…」を使うことになります。
そして、横書きでも漢数字を使う場合があることが記されています。
横書きであっても、語の構成用語として用いられる数などは、漢数字を使う
イ 常用漢字表の訓、付表の語を用いた考え方
例)一つ、二つ、三つ… 一人(ひとり)、二人(ふたり)…
一日(ついたち) 二日(ふつか) 三日(みっか)…
一間(ひとま)、二間(ふたま)、三間(みま)… 等
(「12月2日」「2~5人」のように、日にちを示したり、数を並べたりする場合、算用数字で表記を統一することがある。)
[出典元:文化庁のホームページ「公文書の在り方に関する成果物について(報告)(素案)」]
※黄色マーカーは筆者
ここで注目したいのが、国などが発行する公文書では、横書きの場合も「一つ、二つ、三つ…」を使うということです。
しかし、国が発行するすべての文書に「一つ、二つ、三つ…」を使っているわけではありません。
例えば、子供たちが使う算数の教科書には「1つ、2つ、3つ…」が使われています。
「まいにち だんごを 3つずつたべます。9日かんだと ぜんぶで なんこのだんごを たべますか」
という問題で、もしも「3つ」が「三つ」と書かれていたら、子供たちは「三」を「3」に置き換えてから計算しなくてはなりません。
こうしたことへの配慮でしょうか、(素案)には次の文章が添えられてありました。
ひとつ、ふたつ、みっつ…などの表記に漢数字を用いる理由
公文書では、算用数字を使った「1つ、2つ、3つ…」のような表記はしない。「ひとつ、ふたつ、みっつ…」は、漢字の訓として理解されており、常用漢字表の語例欄に「一つ、二つ、三つ…」が示されている。公用文では、「漢字の読み」というところに注目し、漢数字を用いることとなっている。ただし、物事を数えるときに使うような場合には、算用数字の方が分かりやすい面があるため、広く一般に向けた広報等では用いることもある。
[出典元:文化庁のホームページ「公文書の在り方に関する成果物について(報告)(素案)」]
※黄色マーカーは筆者
「物事を数えるときに使うような場合には……」とあるので、「1つ、2つ、3つ…」は大丈夫、使えるということになります。
まとめ
- 公文書で「ひとつ、ふたつ、みっつ…」と書くときは、縦書きでも横書きでも漢数字で「一つ、二つ、三つ…」と書きます。
- 数を数えるような場合は、算用数字で「1つ、2つ、3つ…」と書きます。
- 公文書でない場合は、「一つ、二つ、三つ…」と「1つ、2つ、3つ…」のどちらを使ってもかまいません。「ひとつ、ふたつ、みっつ」と平仮名で書くこともできます。
算用数字の縦書きについては、すでに各新聞社がハンドブックなどで基準を示して実施しており、読みやすさを感じていますが、時折、不統一に算用数字を縦書きしている私文書に出会うことがあります。
私文書であっても、縦書きの場合は漢数字を使うという原則に立ち返り、自らのルールを決めて算用数字を使っていく必要があるのではないかと感じています。