「暖かい」と「温かい」の意味の違いと使い分け

次の文のあたたかいを漢字にしてください。

①「あたたかいセーター」

②「あたたかいスープ」 

 

正解は、

①「暖かいセーター」

②「温かいスープ」

です。

このような「異字同訓」の漢字の使い分けに迷うことはありませんか?

ということで、今回は「暖かい」と「温かい」の意味の違いと使い分けについてお伝えしたいと思います。

 

はじめに、「暖」と「温」の漢字の意味を「日本語大辞典」で調べてみました。

「暖」と「温」の意味

「暖」の意味

①日差し・空気・気候があたたかい。あたたかみ。「温暖・春暖」「暖国・暖流」

②あたためる。あたたまる。「暖房・暖炉」

「暖を取る」

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

「温」の意味

①あたたか。あたたかい。ぬくい。ぬるい。「温室・温暖」

②あたたかさ、つめたさの度合い。温度。「気温・検温」

③おだやか。やさしい。「温顔・温厚・温順・温和」

④ならう。おさらいをする。「温習」

⑤大切にする。「温存」

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

「暖」と「温」の意味の違い

「暖」は日差し・空気など「気候のあたたかさ」を表していて、「春暖の候」と手紙の挨拶などにも使われています。

また、「暖を取る」という用例があるように、「あたためる・あたたまる」といった意味ももっています。

それに対して、「温」「温度のあたたかさ」を表しています。

また、「温」は「人のおだやかさ」「おさらい」「大切にすること」など、「温度」から離れた意味ももっていることが分かります。

「暖かい」と「温かい」の意味

それでは次に、「デジタル大辞泉」で「暖かい」と「温かい」の意味をくわしく見ていきましょう。

「暖かい」の意味

1 寒すぎもせず、暑すぎもせず、程よい気温である。あったかい。

「暖かい部屋」

「暖かい地方」

2 金銭が十分にある。

「今日は懐が暖かい」⇔寒い。

3 色感がやわらかく、冷たい感じがしない。

「暖かい色調の壁紙」

(出典元:「デジタル大辞泉」コトバンク)

「温かい」の意味

1 物が冷たくなく、また熱すぎもせず、程よい状態である。

「温かい御飯」

2 思いやりがある。いたわりの心がある。

「温かくもてなす」⇔冷たい。

(出典元:「デジタル大辞泉」コトバンク)

「暖かい」と「温かい」の違い

「気候のあたたかさ」を表している「暖」という漢字は「寒」の対義語で、「暑」もまた「寒」の対義語です。

そして、この「気候のあたたかさ」の順番は、「寒」<「暖」<「暑」となります。

ですから「暖かい」は、寒くもなく暑くもない、ちょうどよい気温なのです。

人は、この「あたたかさ」を空気を介して身体全体で感じて「暖かい」と言います。

それに対して、温度のあたたかさの「温」は「冷」の対義語で、「熱」もまた「冷」の対義語です。

そして、この「温度のあたたかさ」の順番は、「冷」<「温」<「熱」となります。

ですから、「温かい」は、冷たくもなく、熱すぎもしないちょうどよい物の状態なのです。

人は、この「あたたかさ」を掌など身体の部分で感じたり心で感じたりして「温かい」と言います。

「暖かい」には、「気候の暖かさ」から離れて、「懐が暖かい」とか「暖かい色調」といった使い方をします。

一方「温かい(温)」には前述のとおり、人の「おだやかさ」など、「温度」から離れた意味があり、「温かくもてなす」といった使い方をします。

そしてこれらは、「懐が暖かい」に対して「懐が寒い」、「暖かい色調」に対して「寒い色調」、「温かくもてなす」に対して「冷たくもてなす」と使われます。

「暖かい」と「温かい」の使い分け

「暖かい」と「温かい」の使い分けは、それぞれの対義語から判断できそうです。

「暖かい」の使い分け

「あたたかい冬」⇔「寒い冬」⇔「暖かい冬」

「あたたかい室内」⇔「寒い室内」⇔「暖かい室内」

「あたたかい気候」⇔「寒い気候」⇔「暖かい気候」

「あたたかい地方」⇔「寒い地方」⇔「暖かい地方」

「温かい」の使い分け

「あたたかい風呂」⇔「冷たい風呂」⇔「温かい風呂」

「あたたかい空気」⇔「冷たい空気」⇔「温かい空気」

「あたたかいスープ」⇔「冷たいスープ」⇔「温かいスープ」

「あたたかい料理」⇔「冷たい料理」⇔「温かい料理」

「暖かいセーター」と「温かいスープ」の使い分け

冒頭の①「暖かいセーター」と②「温かいスープ」の使い分け方を考えてみましょう。

「暖かい」は、「寒い・暖かい・暑い」といった気候の暖かさの一つですから、「セーターを着ていても寒い」「セーターを着ているので暖かい」「セーターを着ているので暑い」という使い方ができます。

それに対して、

「温かい」は、「冷たい・温かい・熱い」といった物の状態の一つですから、「冷たいスープ」「温かいスープ」「熱いスープ」という使い方ができます。

まとめ

「暖かい」と「温かい」の意味の違いと使い分けについてお伝えしてきました。

今回のポイントをまとめます。

「暖かい」

  • 「暖かい」は、「寒い・暖かい・暑い」といった「気候のあたたかさ」の一つ。
  • 身体全体で感じる。
  • 「懐が暖かい」「暖かい色調」といった感じ方も表す。

「温かい」

  • 「温かい」は、「冷たい・温かい・熱い」といった物の状態の一つ。
  • 「思いやりがある」「いたわりの心」など人間の心の状態も表す。
  • 掌など身体の部分で感じたり心で感じたりする。

 

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「暖かい」と「温かい」の意味の違いと使い分け” に対して2件のコメントがあります。

  1. 丹藤 修二 より:

    <また、「温」は「人のおだやかさ」「おさらい」「大切にすること」など、「温度」から離れた意味ももっていることが分かります。>の「おさらい」は復習のことですか。

    1. kakkou より:

      ご質問の「おさらい」について、新明解国語辞典第七版で調べてみました。
      既に習った事を十分納得ゆくまで理解したり自分ひとりで出来るように練習したりすること。復習。〔狭義では芸事の温習会を指す〕表記「《御{復習}い》とも書く。
      とあるので、「おさらい」を「復習」と言い換えても間違いではないと思います。
      ご質問をいただき勉強になりました。ありがとうございました。

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